映画はこの町に関わった調査員の視点を通じて、人と自然が昔から共存する五日市という土地の魅力を探っていく。(点数 50点)
(C)2011「五日市物語」製作委員会
緑濃く清流に恵まれ、空気は澄み食べ物はうまい。住民はおおらかで
よそ者でもすぐに受け入れてくれる。都会に住む人間から見ると理想
郷に見える町・五日市。もはや農業や林業は廃れ、交通網の発達で交
易地としての役目も終えたが、それでも今なお人々は故郷の歴史に誇
りを持って保存しようとしている。映画はこの町に関わった調査員の
視点を通じて、人と自然が昔から共存する五日市という土地の魅力を
探っていく。
【ネタバレ注意】
下請けリサーチャー・友里は五日市市役所職員・栗原の案内で名所を
回り、名物に舌鼓を打つ。やがて古い旅館・油屋で地元に古くから住
み出来事を見てきた老婆・トシ子から昔話を聞かされる。
すっかり五日市に馴染んだ友里は突然の調査中止命令に辞表を叩きつ
け、ルポライターになりたかった夢を実現すべき時と郷土史研究に腰
を据えて取り組む。そしてトシ子の祖父が「五日市憲法」の草起者と
知己を得ていること、一度きりの叶わなかった恋ゆえに結婚しなかっ
たことなどを聞きだす。
その過程で、明治期に日本で芽生えた人権思想、昭和期まで残ってい
た筏の川下りなどを映像化し、五日市がいかに由緒ある街であるかを
調べていく。一方で山のピザ屋や秋川牛などの名産を紹介するのも忘
れない。そのあたりは友里の好奇心を積極的に押し出し、栗原との間
に芽生えた感情なども挟み込んでバランスをとっている。
(福本次郎)