◆親が敷いたレールからはみ出して己の信じた道を進みたい。ふた昔前に流行ったローラーゲームを題材にとり、スピーディな試合シーンを再現。青春まっただ中のヒロインが自らの力で運命を切り開いていく姿は疾走感にあふれる。(60点)
親が敷いたレールからはみ出して己の信じた道を進みたい。ティーンエージャーなら誰しも経験する自立の瞬間。今まで知らなかった世界に触れ、その磁力に引き寄せられたヒロインが、仲間やボーイフレンドに支えられて、両親との葛藤を乗り越えていく展開はいつの時代に共通する通過儀礼だ。映画はふた昔前に流行ったローラーゲームを題材にとり、スピーディな試合シーンを再現。青春まっただ中の彼女が自らの力で運命を切り開いていく過程は疾走感にあふれている。
ビューティーコンテスト出場に熱心な母親にウンザリしていたブリスは、ある日女子ローラーゲーム観戦に出向く。入団テストに誘われエントリーすると合格し、ブリスは年齢をごまかし家族にも内緒で入団、たちまち人気者になっていく。
ブリスの家はテキサスの片田舎の小さな町の中流家庭。彼女自身はオースティンという大きくもない都市に出るささやかな夢はあるものの、将来までは決めかねていて、大きなゴールもなく両親の望む人間になろうとしている。きっと周りの大人たち同様、大過ない平凡な人生を望んでいるはず。しかし退屈すぎる日常とは別の顔を持ちたい抑えがたい情熱もある。物語はありふれた少女が目標に向かって突き進む姿をけれん味なく描く。
ジュリエット・ルイス扮するライバルチームのキャプテンがワイルドな魅力を放っている。彼女もまた若いころはブリスのようにこの町から羽ばたこうとしていたのだろう。何をしたらよいかもがくうちに30歳を過ぎ、やっと見つけた“やりたいこと”がローラーゲーム。ブリスを昔の自分に重ね、試練を与えて成長させようとしている、そんな年齢の差を超えた友情もさわやかで後味が良い。選手はみな本業の傍らスケート靴を履いている。ブリスのニックネームも“ベーブ・ルースレス”と往年のホームラン王のもじりで、“アントキノ猪木”みたいなもの。真剣に戦っているのだけれども切羽詰まったところのないある種の“ぬるさ”が心地よかった。
(福本次郎)