レポゼッション・メン - 前田有一

◆いかにも今どきのアメリカ向き映画(70点)

 人工臓器の回収人という、素っ頓狂な設定が楽しい『レポゼッション・メン』は、いかにもいまどきのアメリカ人向きブラックジョークに満ちたSF映画だ。

 近未来、人々は優れたテクノロジーによる人工臓器を取り替えていくことで、かつてない寿命を生きている。そのトップメーカーのユニオン社は、しかしあまり表ざたにしたくない"回収人"を多数雇っていた。高額な人工臓器の長期ローン滞納者から、強引に自社製品を回収する汚れ仕事を担当する人員だ。ベテラン回収人で腕利きのレミー(ジュード・ロウ)は相棒のジェイク(フォレスト・ウィッテカー)と手際よく回収業務を行っていたが、あるとき事故で自らが人工臓器を埋め込まれてしまう。

 ミイラ取りがミイラになるお話。回収人が回収される側になって、気の毒な貧乏人の気持ちを味わう教訓話といってもいい。斬新な世界観、中国語があふれる近未来のアメリカの風景、容赦ない回収から、必死に逃げ回るハードアクションなど見所はたくさん。

 しかし、SFの楽しみ方はその比ゆするところをあれこれ想像するというもの。本作でいえば、それは近年のアメリカの住宅ローン破綻者への、強行的な担保(自宅)回収ということになろう。これはマイケル・ムーアが最新作で描いていたとおり、現在のアメリカで大きな問題となっている。

 そう考えると、この主人公の境遇はなかなかブラックである。映画ではまったく意思とは無関係に強制的にローンを組まされてしまうジュード・ロウ氏だが、消費をあおるマスコミの影響下で無茶な借金をしてまで家を買う(買わされる?)現実の中低所得者たちも、ジュードさんと大差はないといえなくもない。

 そしてユニークなのは、天職として回収人を楽しむ相棒ジェイクの存在。この男は結末まで絡んでくるが、彼が象徴するものはいったい何なのだろうか。考え始めると脳みその普段休んでいる部分が大いに刺激されることだろう。

 こんな風に考えていくと、あのショッキングな結末はまさに必然であることがわかるだろう。大衆向きの映画でこういうことをやるのだから、アメリカ映画界はすごい。

前田有一

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