3D映画の特性をいかんなく発揮している。(点数 40点)
(C)「ラビット・ホラー」製作委員会2011
落下していくのか上昇していくのか、ヒッチコック映画をより深化さ
せたらせん階段の奥行きはめまいの感覚。それは、スクリーンから飛
び出してくるウサギのぬいぐるみのシーンとともに3D映画の特性をい
かんなく発揮している。さらに、幻覚と白日夢が複雑にシンクロする
エピソードも、副次的な構造がまさに立体的。そこにはもはや物語と
しての整合性は感じられず、迷宮に取り残されたような既視感の連続
は歪んだ精神の矛盾としてのみ理解される。その非現実の世界は、映
像の怖さより音楽のおどろおどろしさのほうが存在感を主張していた。
【ネタバレ注意】
死にかけたウサギを殺したことから大悟は悪夢を見るようになり、異
次元に引き込まれる。それを知った姉のキリコは大悟を連れ戻そうと
するが、いつしか感情が彼女に伝播しキリコもまた異界に落ちていく。
着ぐるみのウサギのモチーフは、無表情が不気味で、特に凶器を振り
回すわけでもないのに怨念がにじみ出ている。一方のウサギのぬいぐ
るみは、力のない弱きものの象徴。この大小2匹のウサギが時と場所を
変え、何度も姉弟を狂気の裏側に連れて行く。納戸の奥に隠された秘
密と封印されたキリコの記憶。何が現実でどこまでが虚構なのか、こ
のふたつが明らかになっていく過程で衝撃的な真実が扉を開く。
ただ、せっかく3Dの表現技術を得たのなら、ホラーでもなんでもない
ヒロインの妄想だけでなく、もっと即物的な恐怖を描いてもよかった
はずだ。。。
(福本次郎)