ライジング・ドラゴン - 青森 学

中国国内に向けた映画なのでジャッキー・チェンが好き、でも日本がもっと好きという人には映画の毒饅頭といえそう(点数 80点)

ジャッキー・チェン最後のアクション大作とのことだが、有終の美を飾るにはドメスティックな国内向けの映画になった。
ジャッキーの初期の出演映画はハンディキャップに打ち克つ万人の共感を得るような作品が多かったのに、やはり泣く子とマーケッティングには勝てないのか。
すっかり世相を反映する作品に仕上がってしまっている。
海賊が日本語を話して苦笑したが、お約束のNG集でジャッキーが海賊を演じた俳優とハグしてジャッキーの苦しい胸中を告白しているようだった。

主人公であるJCはトレジャーハンターと紹介されているが、近代中国にあった美術品を非合法に奪い返すというもの。
映画の中では清朝時代にアロー戦争が発端となり西欧人によって円明園は破壊され略奪の限りを尽くされたのだが、JCがその宝物を奪い返すというのがストーリーの骨子。
盗まれた物は盗み返すという考えは、日本で云えば北条司の漫画『キャッツアイ』も著名な画家だった父親の作品を遺児三姉妹が奪い返す話しだったが、盗む対象は強欲な金満家であったり、それなりに大義名分は立ったのだが、今作はフランスが盗賊の子孫とばかりに非難の対象になっている。
外交問題に発展しそうなデリケートなテーマをさらりと映画にしてしまうジャッキーの愛国者ぶりにはこちらも当惑してしまうのだが、今の中国にはKYなんて弱者の言い訳くらいにしか聞こえないだろう。
日露戦争で大国と互角に戦った当時の日本の戦勝ムードのようなものが今の中国にも拡がっている。
日本人もいつか来た道で中国のナショナリズムを一方的に断罪することは出来ない。
日本人も似たような経路を辿ってここまで来たのだから。

ジャッキーのアクションは相変わらず楽しませるもので、攻撃性だけではなくユーモアも強調される格闘シーンだ。
冒頭では全身にローラーを装着して下り坂を滑走するシーンはCGかと見まごうがごとき危険をはらんだスタントである。
ジャッキーのアクションはこれで見納めになると思うと残念だが、花道を飾る作品としては申し分ないだろう。
ただ、中国人民向けの愛国映画なのでそこは受け入れ難いのではあるのだが。

ちなみに中国の友人にそのことで苦言を呈したら呵々大笑されてしまった。
中国人にとってはその程度のことなのである。
どうも中国人も本気で日本人を海賊のごとき民族とは思っていないらしい。
伝統的に日本人は倭寇と呼ばれて恐れられていたからその名残だろう。
つまり中国人の従来からある日本人観を茶化したヒストリカルなジョークということだ。
そこはご海容くださいといったところだろうか。

青森 学

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