モンゴル - 前田有一

浅野忠信がチンギス・ハーンを演じる50億円歴史大作(50点)

 浅野忠信は外国映画にも積極的に出演する個性派俳優だが、本作もカザフスタンほか4カ国の合作映画。彼の主演映画としては最大級の大作(製作費50億円)で、受賞は逃したがアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。

 中身はチンギス・ハーンの主に若者時代を描く歴史スペクタクルで、浅野は主人公のテムジンを演じる。考証は念入りになされたそうだが、奴隷として長く監禁されていた説を採用した点は新鮮。

 台詞は全編モンゴル語で、上手いかどうかは正直さっぱりわからないが、少なくとも周りに溶け込んでおり違和感はない。ヒロインにも典型的なモンゴロイド顔の新人女優を使うなど、このあたりは徹底している。

 エキストラ1000人を集めた合戦シーンなどアクションの見せ場も少なくない。バタバタと主人公が敵を切り倒していく姿は勇ましく、血しぶきが舞う殺陣も本格的。リアリティにこだわった画面作りがなされている。

 ハートランドたるモンゴルを制覇したチンギス・ハーンに憧れる映画人は少なくないようで、最近でも『蒼き狼 地果て海尽きるまで』(06年)がコケ、いや華々しく公開されたのが記憶に新しい。同ネタを扱った作品としては、あまりに公開間隔が短いため、この二つが比較されるのは避けられまい。

 全編日本語という、斬新かつ向こう見ずな手法で作られた後者には、反町隆史というカリスマ性ある役者が主演した。娯楽性を高めてある分、華やかさではあちらが圧倒的に上。浅野テムジンはみるからに地味で、存在感の上では反町どころか敵のジャムカ役スン・ホンレイにも負けている。

 負けるといえばこの映画、あらゆる面で誠実におふざけなしで作られているのに、戦争時には、時折アホかとおもうような戦術が出てきたりするので困る。戦略的にも顔的にも、これでは勝てる気がしない。

 この映画のチンギス・ハーンは、感情に流されることなく、自らの信念、ルールに基づき人生の駒を進める。妻が敵に妊娠させられても、生まれた子を我が子として存分に愛す。散々苦しめられた相手を倒してくれた男でも、それがルール違反であれば許さない。その一貫した厳しい態度こそが混乱を治め、世に秩序をもたらした。大いに考えさせられるところだ。

前田有一

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