メイド・イン・マンハッタン - 前田有一

絶対あり得ないようなハッピー物語を好きな人に勧めたい(75点)

 ジェニファー・ロペスという、歌手としても人気のある褐色の美人と、レイフ・ファインズという、『レッド・ドラゴン』でサイコな役を演じたとは思えないほど優しい顔をした男が主演の、ロマンティック・コメディ。

 これは、ロマコメのなかでも、玉の輿系に属する映画だ。つまり、『プリティ・ウーマン』や『ノッティングヒルの恋人』といったあたりで、ウットリする婦女子を対象に作られた映画である。

 ……というような事を知り合いの女性(33)に話した所、「あんなもんを好きな女なんているか」と一蹴された。がっくし。

 まあ、確かにこういった映画は、普通の神経を持つ人間ならば、チラシのストーリーを数行読んだだけで、プッと吹き出すような、こっ恥ずかしいものがあるわけで、まして私のような男性が、劇場でこのチケットを買おうものなら、受付嬢のバイト仲間の、その日の1番ネタになること間違いなしといった類のものである。

 しかし私は、この手の映画も案外好きだ。上記2作品はもちろん、この「メイド・イン・マンハッタン」でも存分に泣けた。我ながら安っぽい涙だ。

 有色人種の貧乏メイド(J・ロペス)が、超金持ちでハンサムな二世議員に惚れられちゃうなんてストーリーは、普通に考えたらありえない。しかし、ロマコメとはその非現実に酔わせてくれるのが大きな魅力。本作も、この奇跡的恋愛の様子を、これでもかというほど過剰気味の演出で見せるんだからたまらない。この『やりすぎ』度を下げてくれれば、もう少し高得点をあげたいところなのだが。

 主人公のメイドはシングルマザーで、健気でよく出来た息子がいる。それがまたじつにいい子で、母の恋を成就させるため、ある男らしい行動をとる。ここでまた観客は脚本家の罠にハマリ、号泣だ。

 またこの映画は、音楽も凄くいい。観客を泣かせる事を至上命題として作られたと思しきこのサントラに耐えるのは、涙腺にとって至難の技であろう。

 ジェニファー・ロペスの演技力がビミョーであるとか、そういう事はたいした問題ではなかろう。美人のヒロイン、いい音楽、奇跡というロマコメ3大要素をきっちり満たした『メイド・イン・マンハッタン』を、私は自信を持っておすすめしたい。

前田有一

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