夢のようなおもちゃ屋さん……?(55点)
子供の目で見たおもちゃ屋さんは、こんな風に見えるのだろうか。『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』をみると、誰もがそう思うだろう。
御年243歳のマゴリアムおじさん(ダスティン・ホフマン)が経営するおもちゃ屋は、都市のビルの谷間にありながら内部はまるで別世界。紙ひこうきや動物たちが飛びまわり、世界中のあらゆるおもちゃがまるで生きているかのように輝いている。そこで働く若者モリー(ナタリー・ポートマン)も、この店とマゴリアムが大好きだった。ところがある日、彼が唐突に引退宣言。しかもモリーに跡継ぎになってくれという。
このモリーは元天才ピアノ少女だが、成長して才気が鈍り、自信を失っていることがやがて観客に知らされる。子供たち相手に堂々と笑顔をふりまく彼女の素顔は、まるでマゴリアムのもとでリハビリをしているがごとき、壊れやすい少女だったのだ。
それがいきなり魔法のおもちゃ屋を継げなどといわれ、一気に弱気の虫が現れる。呼応するように店のおもちゃたちも、輝きを失っていく。あれほどきらびやかだった店内が、灰色のそれに変わってしまう。このダイナミックな色彩の移り変わりが、この映画最大の見所。観客はここで一旦、強い息苦しさを感じるが、それがやがてどう変化するのか。じっくりと味わってほしい。
文学に操られる男の物語「主人公は僕だった」(06年、米)の脚本家ザック・ヘルムが、それに続くオリジナル脚本を自ら監督。かつて玩具店の店員をしていたころ空想した設定を膨らませて作ったという、子ども向けファンタジーだ。
ナタリー・ポートマン&ダスティン・ホフマンという、年代は違えど演技派と言われる二人が肩の力を抜いた芝居を見せる。魔法モノというのにCG表現に頼りきらなかった美術スタッフもそうだが、プロフェッショナルがそれなりの仕事をすると、子供相手とはいえ高品質なものが出来るなという印象だ。
ただ、このオリジナル脚本は冒険が一切ない無難すぎるもので、大人の目にはあまりにも退屈に映る。ここで伏線一本張っておけばいいのに、というような不満もいくつか残った。
ところで劇中に出てくる、いつも寂しそうな仕草をみせるぬいぐるみ人形。最後はとっても感動的な場面を演じる?ことになるのだが、正直あんなモン買って帰ったら、後が怖いですな。なんたって子供は、何でもすぐ飽きる。数年後は「チャイルド・プレイ」に続くのかな?
(前田有一)