◆せめて彼の音楽性を少しでも伝える内容であれば(5点)
マイケル・ジャクソンの命日にあたる6月25日に公開されたドキュメンタリー映画だが、これほどヒドい作品は久しぶりに見た気がする。MJのプライベートフィルムという触れ込みだが、とても映画とは呼べず、素人がユーチューブにアップした画像のレベルにすぎない。内容は、2009年に急逝し、キング・オブ・ポップと呼ばれるMJの素顔に迫るというもの。生前、彼の身近にいた元マネージャーによって撮影されたフィルムには、故郷を訪れ大歓迎を受ける様子や、ネバーランドでの様子、親しい人だけに囲まれたバースデー・パーティなど、素顔のMJの様子が記録されている。
大評判になった「THIS IS IT」は、実現しなかったコンサートのリハの模様を追いながらアーティストとしてのMJの素晴らしさを改めて感じさせる巧みな内容だった。それに対し、本作のウリは、MJの人間性。だが、ファンを大切にしていたことや、超VIPである彼にはプライベートな時間などないに等しいこと、常にスターとしてのふるまいを求められることなど、分かりきったものばかりではないか。にわかMJファンならお宝映像と大騒ぎするかもしれないが、映像や音響などにまったく配慮せず、編集も稚拙なこの記録映像は、MJファンだけでなく映画ファンに対しても、期待を裏切る内容だ。そのせいか、MJの資産管理団体から、この映画を「公認せず」ときっぱり言われてしまう始末。カメラで密着したのが“最も信頼されたマネージャー”というのも何だか眉唾ものだ。不世出の大スターで、急逝後、さらに音楽的な評価が高まったMJ。せめて彼の音楽性を少しでも伝える内容であればと、残念でならない。
(渡まち子)