ポゼッション - 青森 学

子を持つ親の気持ちは悪魔の邪心より勝るというお話し(点数 78点)


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悪魔に取り憑かれ心を壊していく少女の原因を家庭不和が原因と誤解されていくストーリーは面白かった。
二つのエピソードが同時進行して交差するまで固唾を飲んで見守らなくてはならない展開がスリリングだ。
ラストはホラー映画ではお決まりのオチで締めくくっているが、この様式美と言っても過言ではない終わり方は、邪悪な存在は日常にはびこっているという人間の強迫観念に近いものがある。
しかしながら悪魔の存在の意味を解体していくと人間の悪魔性に目を背けてその罪を人間では無い他者に負わせているだけにすぎない。
そのことについては後述するが時代が下るのにつれてその事実に多くの人が気づき始め悪魔の存在のリアリティが希薄になってきているように思われる。

少女がガレージセールから買い取ったいわく付きのアンティークの箱は1920年代にポーランドで製作されたと紹介されているが、アウシュビッツが設営されるのはその20年後。
ヨーロッパを覆う禍々しい雰囲気はナチスの到来を予言するようで、悪魔が跳梁跋扈しているイメージにも合う。
その設定に説得力があった。1920年代なら悪魔にも棲む場所が多く有ったのかもしれない。

家庭不和のストーリーと悪魔憑きのストーリーが同時進行して終盤にシンクロしていくさまは物語に奥行きを与えて単なる恐怖映画では済ましていない点で評価できる。

観客を恐怖に陥れる手法は相変わらず西洋的で日本映画のような心裡に訴えかけるような恐怖よりも肉体の痛みを想像させる描写が多い。
なので、確かに怖いことは怖いのではあるが、どちらかというとお化け屋敷で展開される恐怖に近く怖さのあまり不眠になるようなほどでもないので安心して見られた。
むしろ親子の絆をしっかり描いている点でファミリードラマとしてもきちんと成立していたのが良い。

多くの人は悪魔が恐ろしいのではなく人間こそが最も恐ろしい存在であることに既に気がついている。
だから『サイコ』や『羊たちの沈黙』に戦慄するのである。
こういったホラー映画の存在理由が希薄になってくる昨今、居場所を確保出来るのはホラー映画の楽しみ方を心得ている好事家の心の中だけだろう。
ホラー映画は万人受けするジャンルから離れて一部の趣味人の支持によってその命脈を保っているような気がする。
たぶんそんな世間の傾向から一般化するためにホラー映画にドラマ性を盛り込む必要を製作者も感じてきているのではなかろうか。

青森 学

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