◆ノリの良い楽曲を歌うシーンが随所に散りばめられているので、観る者をゴキゲンな気分に浸らせてくれる(70点)
コンゴの首都キンシャサで活動するバンド“スタッフ・ベンダ・ビリリ”に迫る音楽ドキュメンタリー。監督は、フランス出身のフローラン・ドゥ・ラ・テューレとルノー・バレのお二人。
ベンダ・ビリリのメンバーには、身体障害者や路上生活者も存在する。これだけで重い、暗い、小難しいことが描かれるのかと思いだろうが、そういった堅苦しいことはほとんど描かれない。しかも、苦しい生活状況に置かれているメンバー全員がやけに明るく前向きに頑張っているので、そういったことを一切感じさせない。これがまた本作の最大の良いポイントでもある。また、苦しい生活を送っている彼らの歌声、活躍からは観る者に生きるための勇気、希望を与えてくれるのである。
本作の魅力は、なんと言ってもビリリの歌と演奏の数々だ!! とにかくノリの良い楽曲を歌うシーンが随所に散りばめられているので、観る者をゴキゲンな気分に浸らせてくれる。なかでもヨーロッパツアーでの観客の熱狂、盛況は音楽映画としての醍醐味を存分に感じさせてくれる。
歌詞にはメッセージ性が込められた物や貧困などのマイナスな状況をあっさりとネタにした物もある。これが、彼らが前向きに生きていることや明日への希望を抱いて頑張っていることをしみじみと実感させ、心を打たれてしまうだろう。
また、空き缶などで作られた手作りの楽器でも日本やアメリカ、イギリスのヒット曲をも超越するかのような素晴らしい音楽に仕上げられるのかと驚かされた次第だ。
本作の見所は、音楽だけではない。ビリリのリーダーである“パパ・リッキー”と後にビリリのメンバーとなる音楽の才能を持ったストリートチルドレンのロジェとの“父子の物語”も注目すべきポイントであり、ロジェがメンバーになってからの成長ぶりを感動的に描く。
勇気づけられる音楽、歌…色々と存在するが、ビリリの歌こそこれにピッタリと当てはまる!!
(佐々木貴之)