◆観る者をベンジャミンの世界へグイグイと引き込ませる(75点)
産まれたときの見た目が老人で年齢を重ねるごとに若返っていく男ベンジャミン・バトンの、文字通り“数奇な人生”を描いたデヴィッド・フィンチャー監督作品。主人公ベンジャミンを演じるのはブラッド・ピット。フィンチャー監督とブラピが『セブン』(95)、『ファイト・クラブ』(99)に続いて三度目のタッグを組んだ。原作は、F・スコット・フィッツジェラルドが1920年代に書き上げた同名の短編小説。
第一次大戦終戦直後のニューオリンズ。あるカップルの間に男児が産まれる。だが、産まれてきた赤ん坊の見た目は普通ではなく、80歳の老人のようであった。実父はこの赤ん坊を老人施設に置き去りにする。施設関係者の女性クイニー(タラジ・P・ヘンソン)は、この赤ん坊をベンジャミンと名付け、親代わりとなって育てる。ベンジャミンは年齢を重ねるごとに皺が減り、髪も増え、だんだん若返っていく。ある日、ベンジャミンは施設利用者の孫娘デイジー(エル・ファニング、後にケイト・ブランシェット)に出逢う。
ベンジャミンとデイジーとの恋、人々とのふれあい等を通して“人生の素晴らしさ”を訴えかける。普通の人とは違った人生を悲劇として描いたり感動を押し売りにしたような描き方をせず、あくまでも自然体でストレートに描いている。
ユニークなアイデアの原作は映像化に相応しく、見た目老人の男が若返っていくというストーリーの基本的なポイントが観る者に興味を抱かせる。劇中では様々なドラマが見所として散りばめられ、観る者をベンジャミンの世界へグイグイと引き込ませる。157分の長尺を長く感じさせないのは、ユニークなストーリー設定と飽きさせない作りを施したからだと言える。ファンタジー、人間ドラマ、ラブロマンス、ロードムービー、ミステリーといった様々なテイストが取り入れられており、これらが映画的魅力を存分に発揮しているのである。
CGを巧妙に駆使して仕上がったビジュアル、様々な年齢を演じ分けた登場人物のメイク等は違和感を感じさせず、本当に完成度が高い。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)を思わせるような感じがするのは、脚本が同じ人(エリック・ロス)であり、そう言われると納得できる。
(佐々木貴之)