ベスト・キッド - 渡まち子

ベスト・キッド

◆壮麗な中国の景色をバックに武道の修行に励む図はそれだけで美しい(65点)

 1985年の同名映画のリメイクだが、舞台を中国に、空手をカンフーに、主人公の年齢を高校生から小学生に変更し、師弟関係と少年の成長を描くカンフー・サクセス・ストーリーだ。アメリカから北京に引っ越してきた12歳の少年ドレは、言葉や文化の違いから新しい環境になじめず地元の少年たちからいじめに遭う。必死に仕返しをしてもさらに手痛いメに遭うドレ。ある日、一見冴えない中年男に見えたアパートの管理人ハンがドレの窮地を救う。カンフーの達人のハンは、なりゆきでドレが出場することになった武術大会に向けて猛特訓を始めるが…。

 ラルフ・マッチオ演じる主人公がたくましく成長するオリジナル版同様、いじめられっ子のドレも内に秘めた力を開花させる。12歳という心身ともに成長期にある少年には、師の言動はそのまま父親のそれに匹敵するほどの影響力。ハンは悲しい過去から妻子を失い、父を亡くしたドレとは“失った家族”という共通項で結ばれている。最高の戦いは、戦わないこと。このセリフは、実際に武術の達人であるジャッキー・チェンが言うからこそ強い説得力を持つ。そして本気で戦うためには、基礎がいかに大切かを説くセリフもしかり。上着を落としては拾い、それをまた柱にひっかける。この単調な動作がやがてドレの日常生活まで変える場面は実に上手い。すべての動きにカンフーが宿るとはこういうことかと分かる見事なシーンだった。壮麗な中国の景色をバックに武道の修行に励む図はそれだけで美しい。ドレを演じるジェイデン・スミスはウィル・スミスの実子で父親譲りなのか動きがとてもリズミカルだ。「幸せのちから」では繊細な表情が印象的だったが、本作では淡い初恋と可愛らしいキスシーンもあって、微笑ましい。クライマックスのカンフー大会では、手に汗握るバトルが用意されている。正しい導きこそが子供たちを成長させるというメッセージは、大人にも強い自覚を促すものだ。本当の強さとは何かということが、主人公やいじめっ子も含めて子供たちが学ぶラストがさわやかだった。

渡まち子

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