大阪人の「太閤さん」への尊敬やこだわりの視覚化には親しみさえわいてくる。(点数 60点)
(C)2011 フジテレビジョン 関西テレビ放送 東宝
一見普通なのにどこかおかしい。それは背中に視線を感じるが振り返
ると誰もいないという、言葉にできない気持ち悪い感触。慣れない土
地で覚える居心地の悪さをみごとに映像化している。そんな「大阪中
が口裏を合わせている」ような、公然の秘密を自分だけが知らない不
安と緊張がスクリーンからにじみだし大阪の街が異次元空間のように
思えてくるほど不気味なリアリティを伴う演出にのめり込んでしまう。
さらに歴史から隠ぺいされた出来事をを人知れず守る人々の存在が、
「ダ・ヴィンチ・コード」風のミステリアスな知的興奮を刺激する。
会計検査院の松平、鳥居、旭の3人は大阪出張でOJOと名付けられた怪
しげな組織を監査、不審な点を追求するうちに、大阪は明治政府によ
って認められた独立国だった事実を教えられる。
新世界、道頓堀、空堀商店街、府庁、大阪城。大阪の街とそこに住む
人々をディテール豊かな活写のおかげで、この壮大なほら話がリアル
に見えてくる。また、大阪国総理大臣を名乗る真田がすべての鍵を握
る人物なのだが、普段はお好みを焼いているおっちゃんの設定がいか
にも“仮の姿”ぽい。
やがて、松平は権限を盾に国からの交付金を断とうとし、真田がつい
に行動を起こす。その際も、秀吉の馬印・瓢箪が暗号代わりに使われ
るなど、大阪人の「太閤さん」への尊敬やこだわりの視覚化には親し
みさえわいてくる。
(福本次郎)