◆問題企業の実態が、誇張とも現実ともとれるディテールで描かれるのが笑える(65点)
過酷な職場で煉獄のような日々を送る人に、元気を与えるユニークな物語は、2ちゃんねるの書込みから生まれた実話を基にしている。ニート生活から母親の死で一念発起した26歳のマ男は、プログラマーとして就職活動を行なう。だが、中卒の彼をようやく採用してくれたIT企業は、サービス残業・徹夜・ありえない仕事量など、超過酷でトンデモナイ職場。いわゆるブラック会社での毎日に、マ男は心身ともに限界に達していく。
この長いタイトルが、映画の中身の大半を物語る。ピラミッド型の構造は、どんな業界でも同じだろうが、IT企業のそれはかなり過激だ。問題企業の実態が、誇張とも現実ともとれるディテールで描かれるのが笑える。だが、納期を目指して毎日デスマーチ(死の行軍、通称デスマ)が続くさまは笑い事ではない。クセ者ばかりの社内の人間模様を、三国志の登場人物に例えて説明するアイデアが冴えている。思わず、山崎豊子センセイに小説化してもらいたくなる業界の実情なのだが、映画はあくまでも軽さを忘れない。ここが若者にアピールできる点だ。ただ、現在、100年に一度の不況の只中、死ぬほどツライ職場でも働けるだけありがたいというご時世なので、物語のアピール度はビミョーではある。それでもニートから抜け出し、自分なりに成長した主人公には拍手を送りたい。もうちょっと頑張れるかも。見終わってそう思えればしめたものだ。
(渡まち子)