高度3万フィート……。飲んだら乗るな!乗るなら飲むな!(点数 85点)
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オープニング、とある一室、全裸の女性がショーツを身に付ける。
横のベッドでは気だるそうに男が目覚めます。
この二人がこの後の世紀の大事件にかかわるキャビンアテンダントとパイロットです。
フロリダ州オーランド発アトランタ行きの旅客機に乗り込む機長(デンゼル・ワシントン)は抜群の操縦テクニシャンで激しい乱気流を鮮やかにスルーします。が、突然の急降下とともに機体が制御不能に陥り、最後の手段「背面飛行」で機体を水平に保ちながら、草原に決死の不時着に挑むのです。
アトランタの病院で目覚めた機長は、パイロット組合の幹事から、乗客乗員102人中生存者96人だと告げられます。高度3万フィートからの、それはまさに奇跡なのでした。しかし、愛するひとりのキャビンアテンダントが亡くなったと聞き強いショックを受けます。
この不時着にマスコミは機長の偉業を称え、彼は一夜にしてヒーローとなるのでした。
しかし、退院した機長は世間から隠れるようになるのです。
それは、本人だけが知っていた後ろめたさからです。
フライト・レコーダーから事故の真相は機体の故障だと解明されたはずなのに、何故かウィトカー機長には弁護士がついたのです。
それは事故後、乗務員に行われた検査の結果、機長の血液中からアルコールが検出されたからで、ヒーローが一転犯罪者となったのです。
パニック映画ばりの前半から一転してアルコール依存の恐ろしさにフォーカスする後半がとても巧い演出で、終盤は観る者の心を射抜き涙することでしょう。
神業操縦で多くの乗客の命を救ったパイロットのアルコール依存症者を通して、真の正義を問う本作は、古くは『失われた週末』、『酒とバラの日々』や『リービング・ラスベガス』『男と女が愛する時』と並ぶ、アルコール依存症という「病」をしっかりと描いた秀作です。
■2012年 アメリカ映画/上映時間:138分/監督:ロバート・ゼメキス/出演:デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、ケリー・ライリー、ジョン・グッドマン、ブルース・グリーンウッド
オフィシャルサイト:http://www.flight-movie.jp/
(中野 豊)