◆ブレまくる映像からは現場の生々しい恐ろしさや壮絶さが存分に感じられる(80点)
ミャンマー国内の情報を発信し続ける一般市民=VJ(ビデオ・ジャーナリスト)の姿を追ったデンマーク製ドキュメンタリー作品で第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。
自国の独裁政権に僧侶たちが反政府デモを巻き起こし、VJたちが小型ハンディカムを片手にその模様を捉え、世界中に向けて発信する。政府からは報道が規制されているため、VJたちのこの行為には大きなリスクが伴い、見つかれば投獄され、酷い仕打ちを喰らうこととなる。そんな危険を顧みずにVJたちは自国の現状を世界中に知ってもらおうと奮闘する。
映像はハンディカムで捉えたモノが大半を占めているが、一部は再現映像が用いられている。「誰かに観られているかも知れない…」、「見つかるとピンチ!」という緊迫感が観る者に伝わり、ブレまくる映像からは現場の生々しい恐ろしさや壮絶さが存分に感じられる。また、軍政によって殺害された僧侶の痛ましい遺体は凄惨極まりなく、このような自国の酷い独裁国家ぶりをVJたちは強く訴えていることを実感させられた。これらの衝撃映像は、まさに隠し撮りだからこそ捉えることができたのである。
「何故デモが起きたのか?」、「政治とは無縁の僧侶たちがなぜ軍政に立ち向かうのか?」といったことが分かり易く説明され、克明に描いていることも好ポイントだ。また、必要以上に時間を掛けてダラダラと魅せつけたりすることなく、無駄を省いて85分という丁度良い時間にまとめ、政治をネタにした社会派作品に観られがちな小難しさや堅苦しさを感じさず、観易い作品として仕上げたこともナイスだ。
(佐々木貴之)