◆B級映画らしい面白さの中に、Z級映画のバカバカしさが顔を出し、意外に楽しめるSFコメディー(66点)
本作は元々、超低予算で撮影する予定がどんどん規模が膨らんでいったという。結果、大作とはいえないがそれなりの格好になった。もっとも、Z級がB級になった程度ではある。だが、Z級らしいバカバカしさが消えずに残っているのがかえっていい。それがスパイスとなって、独特のテイストに仕上がっている。
ある日突然、主人公のダメ男クーパー(クリス・マークエット)が気を失って目覚めると、世界は巨大な昆虫に支配されていた。クーパーは美女サラ(ブルック・ネヴィン)、お天気キャスターのシンディ(レイ・ワイズ)、耳の不自由なヒューゴ、その父アルらと、安全な場所を求めて町を移動する。行き先では、クーパーの父で元軍人のイーサンが待っていた。
昆虫の世界から人々が脱出する話といえば「ミスト」を思い出すが、あれはシリアスなパニック・ホラーだった。こちらはSFコメディーで、どちらかというと「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「フィースト」シリーズに近い。もっとも、悪趣味度やグロテスク度はほどほどに抑えてあるので、デート映画にも使えるだろう。極限状態の中で、クーパーとサラののんびりとしたロマンスもあるし、父と息子の親子愛もある。
スベリ気味の笑いに、昆虫に襲われるスリル、生き残りをかけた人間同士の争い、人間と昆虫が戦うアクションと、B級映画らしいいろんな要素が程よく盛り込まれている中で、ときどき、Z級映画っぽい呆気にとられるようなバカバカしさが顔を出すのが面白い。例えばそれは、お天気お姉さんのシンディのキャラクターに表れている。不安になって突然クーパーに裸で迫り、断られると大声で昆虫たちを呼び集め、最後は仲間に撃ち殺されてしまう。昆虫と合体した人間(お天気お姉さんの兄)の描写もあまりに変だし、CG(ハリボテも併用していると思われる)の昆虫も、リアルかチャチか微妙な感じだ。バカだったり、変だったり、チャチだったりするところにZ級なトンデモ映画の味わいがあり、それが楽しかった。
無名のスタッフ・キャストが作ったいかにも安っぽそうな作品なのだが、最後まで飽きずに楽しめた。
(小梶勝男)