◆スキンヘッドにヒゲ面という“いかにも”な風貌のジョン・トラボルタがスクリーン狭しと暴れまわる姿は、痛快かつ爽快。有無を言わせぬ暴力的性向はスタイリッシュの対極だが、迷いのないストレートな強さはカタルシスを覚える。(60点)
絡んでくるチンピラをぶちのめし、銃口を向ける者は躊躇なくぶっ殺す。この恐ろしく粗野でスゴ腕の主人公をジョン・トラボルタが大熱演。スキンヘッドにヒゲ面という“いかにも”な風貌の男が問答無用の暴走でスクリーン狭しと暴れまわる姿は、痛快かつ爽快。有無を言わせぬ暴力的性向はスタイリッシュの対極にあるが、迷いのないストレートな強さは清涼なカタルシスさえ覚える。考える間を与えぬスピーディな展開と謎が謎を呼ぶ構成はミステリーの趣も備え、極限まで無駄をそぎ落としたストーリーテリングに時間が経つのを忘れてしまう。
パリの米国大使館に勤務する下級工作員・リースはワックスという捜査官の運転手を命じられる。ワックスはいきなり中華料理店の従業員を全員射殺、その後麻薬ルートを追ってパキスタン人のアジトも殲滅する。
マルチリンガルのリースはエリート然としていて自らの手を汚す工作員としてはぎこちない。そんな彼をワックスが実地教育していくのだが、2人の価値観の違いがほのかな笑いを誘う。物語はリースの目を通してワックスを描き、ワックスの驚異的な殺傷能力に目を見張るばかり。特にワックスの後からアパートのらせん階段を上るリースの目の前に、一人また一人と悪党の死体が降ってくるシーンは、生々しい死の恐怖を実感させるとともに、命がけの現場仕事の厳しさを教えているよう。「スター・トレック」の話題で2人のジェネレーションギャップが明らかになるが、修羅場をくぐるうちにリースには尊敬の念、ワックスには父親のような感情がお互いに芽生えていくなど、男女間の愛よりも男同士の友情を優先させるところが「男の映画」としての魅力を輝かせる。
やがて米国国務長官を狙った爆弾テロ計画に 2人はどりつく。阻止せんがためにワックスは高速道路を激走する自動車にハコ乗りしたりバズーカ砲をぶっ放したりと大奮闘。それでも最後にはハニートラップに落ちたリースに汚名返上のチャンスを与えるなど先輩らしい心遣いも見せる。トラボルタの圧倒的な存在感だけに頼るのではなく、サービス精神とエスプリにあふれる作品だった。
(福本次郎)