ハンテッド - 前田有一

◆すべて『本物』にこだわったリアルアクションだが……(45点)

 徹底的に『リアル』にこだわった、追跡アクションもの。追跡に関わる映画の87%に出演している事で有名なトミー・リー・ジョーンズが、今回も主演であるのは言うまでもない。

 この映画のアクションは、一見荒唐無稽に見えても、すべて専門家が、「この高さからなら、ダイブしても肉体は無事なはず」などと、お墨付きを与えたものだそうである。

 さらに、ナイフを主体とした格闘術は、映画的な演出は最小限で、すべてマーシャルアーツ(軍隊格闘技)を主体とした、実際の殺人術そのものをそのまま使っている。ちなみにこれ、『ボーン・アイデンティティー』にも使われた格闘技で、最近の流行らしい。

 そのわりには、トミー・リーの走り方が貧弱だとか、つっこみたくなるのだが、まあ、ハリウッド最強の『追跡者』である彼も歳をとったということだ。

 追跡といえば、あしあとやわずかな痕跡をもとに敵を追うチェイサーという職業(職名なのか?!)についても、この映画の考証は非常にリアルである。

 『Masterキートン』あたりを読んでいる人ならわかる通り、この技術は非常に高度な専門知識と経験が必要で、マンガだととても見応えがあるのだが、残念ながら、映画で見るととんでもなく地味で、下手をすると足跡を確認するシーンなんて、マバタキ中に見逃す恐れすらあるくらい、あっさりしたものである。

 リアルを追求しているからとはいえ、もうちょい一般人にも分かりやすく、オーバーに演出してくれないと、喜ぶのはコンバットマガジン読者レベルの軍事マニアだけ、と言うことになりかねない。

 ちなみに、銃の扱いにはうるさい私が見ていて、「あの後ろの警官役の連中、えらいプロっぽい構えだなぁ」と思っていたら、現役のFBI捜査官を使ったエキストラだと後で知った。そこまでこだわるとは、なんともおそるべし。おそらく、銃も実銃ではないかと思うのだが、それは未確認だ。(詳しい方、御意見求む)

 そんなわけで、妙に大金をかけて作ったアクション映画であるが、決してカッコ良くは見えないのが痛いところだ。なんというか、『ランボー』的なバカらしさがあるのである。

 例えば、都市での追いかけっこは、いかりや長介が一つのドアに入ると、隣のドアから志村けんが現れるという、ドリフの追跡コントを彷彿とさせるものがあり、日本人としては苦笑を禁じえない。

 やはり、普通の方には、オススメしかねるというのが、正直な所である。

前田有一

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