ハングオーバー 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い - 前田有一

ハングオーバー 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

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◆高度な計算で作られたコメディ作品(75点)

 徹底的に練りこまれた脚本のコメディ、しかもお馬鹿お下劣系のそれというのは、日本ではあまりなじみがない。客の入らぬ映画を上映しても仕方がないのでビデオスルーになりかけたってのもわからぬでもないが、そうした作品の中にこそ掘り出し物があるわけだ。とくに『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』は、ゴールデングローブ賞受賞など、本国で評価が定まった手堅い一品であり、「本当によくできた映画をみたな」と感じたい方には、今週真っ先にすすめたい一本である。

 結婚式を2日後に控えたダグ(ジャスティン・バーサ)は、悪友のフィル(ブラッドリー・クーパー)とスチュ(エド・ヘルムズ)に、マヌケで空気の読めない義理の弟アラン(ザック・ガリフィナーキス)を加えた4人でラスベガスの高級ホテルのスイートにチェックイン。だが翌朝目覚めると皆の記憶はなく、ダグの姿もない。最悪の二日酔いの頭で彼らは考える。いったい昨夜、何が起きたのか?

 独身最後の馬鹿騒ぎ=バチェラーパーティというあちらの習慣は、よく映画の中で見ることができるが、これはあまりにひどい。スイートルームは滅茶苦茶で、バスルームにはなんと本物のトラがいる。自慢の前歯はなぜか抜かれ、見知らぬ赤ん坊まではっている。

 ──なんてのは序の口、部屋を出るとさらなる驚きが待っており、その素っ頓狂な展開はまったく予測不可能だ。

 そして本作がすばらしいのは、これらの「異常事態」をナンセンスなエピソードでなく、すべて論理的な理由の元におきた「事件」として扱うこと。すべての事態にはちゃんと原因があり、それは最後にすべてつながる。まったく驚くべきことではあるが……。

 最初から試写室内は爆笑の連続で、私自身も腹が痛くなるほど楽しませてもらった。そのうえ、上記のようなロジカルな構成の脚本の面白さを味わえるのだから、これで満足度が低いはずがない。ろくでもない奴だなあと最初に思わせておいて徐々に挽回させるなど、キャラ立ての基本を押さえたつくりで、随所にうまさを感じさせる。

 とくに、ヘザー・グレアム演じるストリッパーがからむエピソードと結末。これが鑑賞後の観客の心を大いにいい気分にさせてくれる。ただの行き当たりばったりのギャグ映画では決してない。ミスリードのうまさ、計算づくの構成など、あまりにテクニックが上手すぎて鼻につく。それだけが不満という、なんとも贅沢な一品である。

 出演者、スタッフとも芸達者そろい。まさに一流の芸を見に行く映画である。

前田有一

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