トロッコ - 渡まち子

◆家族の喪失と再生の物語だが、そこに日本統治時代から取り残された台湾の人々の無念を組み込んだストーリーが素晴らしい(70点)

 芥川龍之介の同名短編小説を下敷きにして、異国を訪れた少年の心の揺れを繊細にスケッチする佳作。8歳の敦(あつし)は、台湾人の父親の遺灰を届けるため、日本人の母・夕美子と6歳の弟の凱(とき)と3人で台湾の小さな村を訪れる。そこには日本語を話す優しいおじいちゃんが待っていた。敦が父からもらった古い写真にはトロッコと線路が写っていておじいちゃんはその場所を一緒に探してくれる。数日後、敦と凱は、森林の再生を願って働く青年と一緒に、昔、日本軍が敷いたという線路の上にあるトロッコに乗り山へ向かうが…。

 原作と共通しているのは、行きのトロッコに乗る嬉しさと、戻りの歩いて帰らねばならない不安だ。これだけでも少年には大冒険だが、敦の中では、異国での不安、父を亡くした悲しさ、母に素直に甘えられない寂しさなどが渾然一体となっている。それらすべてを包み込むのが、おじいちゃんの優しさであり、鬱蒼とした山の煙るような緑の景色なのだ。家族の喪失と再生の物語だが、そこに日本統治時代から取り残された台湾の人々の無念を組み込んだストーリーが素晴らしい。村の老人たちは皆、若いころ強制的に覚えさせられた日本語を話すが、その言葉が泣きたいくらい丁寧で美しいのだ。台湾といえば反日感情が薄いというイメージだが、戦後処理の不公平をさりげなく教えられ、政治の思惑とは別次元で、ただ申し訳ない気持ちになる。小さな冒険の果てに初めて心から泣いた敦。そんな息子を抱きしめる母もまた、夫を亡くした後の気持ちの整理をつけなければならない。日本と台湾を結ぶ父親がいなくなっても、優しい絆は確かにある。「また、いつでもおいで」。おじいちゃんのその言葉に涙が溢れた。日台双方の俳優の自然な演技と、名カメラマンのリー・ピンピンの美しい映像が堪能できる至福を静かに味わいたい。

渡まち子

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