やる気が感じられない(35点)
「子供向き」と「子供だまし」という言葉は似て異なるものだが、映画『チェケラッチョ!!』には、その両方が当てはまる。
舞台は沖縄。主人公はさえない男子高校生3人組(市原隼人&平岡祐太&柄本佑)。彼らは気の強い同級生の女の子(井上真央)に誘われたインディーズバンドのライブでラップに目覚め、自分らもバンドを結成。次回のライブで、その憧れのバンドの前座で演奏することになる。
そんなありきたりなメインストーリーの中に、適当に恋愛要素が挿入される。年上の女性にあこがれる主人公、その主人公に憧れる気の強い同級生女子、その女の子に憧れる主人公の親友と、恋愛ベクトルが絵に描いたようなループ構造になっている。
『チェケラッチョ!!』は、一言でいえば、「3人組を演じる若手人気アイドル」と「沖縄」、そして人気絶頂のバンド「オレンジレンジ」を組み合わせて、チョチョイと作ったお手軽映画だ。
監督はテレビドラマの演出から今回映画初監督となる宮本理江子。スタッフをみてもキャストをみても、いかにもフジテレビが企画しそうな、小中学生向け・テレビドラマの延長的映画といえるだろう。
日本人がやって、最もサマにならない音楽ジャンルはラップだと私は思っている。だからこそ、日本でラップの映画を作るなんて、無謀もいいところなのだが、さらに悪いことに、この映画では作ってる人も出ている人も、誰も本気でラップに情熱を注いでいない。そのため、結果として主人公の少年たちも、最後の最後までちっともカッコ良く見えはしない。
なるべくお金をかけずに作って、そこそこの客が入ればいいという発想だから、とりあえず劇中には話題性抜群の超人気バンド、"ORANGE RANGE"のヒット曲をたくさん流したりしている。沖縄の美しい自然のもと、どこかで聞いたようなドクターマリオの曲をバックに、子供たちが楽しそうに青春を謳歌している。
それにしても、子供向けだからといって、恥ずかしげもなく子供だましなものを作るのは、どうかと思う。彼らだって、せっかくのゴールデンウィークを1日つぶして映画館にやってくるのだ。もしかしたら、初めてのデートで観るかもしれない。そんな大切な若き日の思い出がこんなのでは、大人になって見返した時、あまりにみじめではないか。これを作ったみなさんは、本当はお金も実力ももっともっとあるんだから、もうちょっと本格的な、まともな映画を作ってみせてあげましょうよ。
(前田有一)