ダーリンは外国人 - 前田有一

ダーリンは外国人

© 2010「ダーリンは外国人」フィルムパートナーズ

◆面白い素材を生かすことができず(40点)

 『ダーリンは外国人』はコメディ、とくにラブコメ作りの肝を分析せずに作ったこのジャンルの映画がいかにひどい代物になるかがよくわかる、すぐれたサンプルである。

 イラストレーターのさおり(井上真央)は、「漢字」の美しさに惚れて来日した語学オタクのアメリカ人、トニー(ジョナサン・シェア)と知り合い恋に落ちる。日本語がぺらぺらでいつも温厚なトニーとの同棲生活は幸せだったが、二人の恋には予期せぬ障害がいくつも待ち受けていた。

 小栗左多里による自伝的コミックの実写版。私はそれを読んでいないが、それでもこの映画の問題点についてはすぐに指摘することができる。

 まずストーリーについて、二人の結婚を物語のゴールに設定した事がそもそもの間違いである。国際結婚など珍しくもない今の時代、それを目指して必死になる二人……というストーリーには魅力のカケラもない。

 なのにこの映画ときたら、そのありふれたイベントをまるで地球に迫る隕石に穴を掘って核爆弾をしかける大プロジェクトのように取り扱って、無理やり盛り上げようとする。

 父の反対だのアメリカ行きだのといったピンチをわざとらしく作って必死だが、それを見てはらはらどきどき、「きゃ~、この二人ってば無事結婚できるのかしら~」などと感じてくれる観客がいると、本気で思っているのだろうか。もしそうなら、それは観客たちをバカだと思っているのと同じである。

 どうせ二人がくっついて幸せにキスして終わるのは、映画館に入る前から全員が知っているのだ。だから映画監督と脚本家は、そこまでの道のりを険しく盛り上げようなどと無理して考える必要はない。そんなことはだれも望んでいない。むしろ真っ先に、そうした発想を切り捨てるべきだ。

 では何をすべきだったかと言えば、他のラブコメと違って本作だけが持つ唯一の武器、「異文化ギャップによる笑い」を極めることであろう。だいたい原作だって、まず第一にそこが面白いから売れているのではないのか。キャラクターへの共感にしても、まずそれがあってこそ、であろう。

 本作でも、ある結婚式で自虐的なまでに謙遜する日本人の習慣にトニーが本気で反論する場面などは、客席の爆笑を誘うもので、優れたコメディーシーンとなっていた。監督と脚本家がやるべきは、こうしたギャグをいまの50倍ほど考え、厳選して配置することだ。たっぷり笑わせたその上で、トニーのキャラクターになごませ、予定調和なラストで幸せ気分を味あわせる。それこそがラブコメの肝、基本中の基本、守るべき順序である。

 それをやらず一足飛びに、20年前のトレンディドラマのような凝った告白セリフを言わせたりするから失笑をかう。語学オタクなのにわざとらしい言い間違えをするなどといった、実写にするとちぐはぐさを感じさせるシーンも思い切ってカットすべきだ。

 カメオ出演している本物の二人が美男美女だったり、演じる二人の役者の熱演などみるべきところがないわけではないが、これではあまりにもったいない。もう少し、このジャンルを研究した人が製作に加わっていたならばと残念に思う限りである。

前田有一

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