◆レイ・ハリーハウゼンの同名作のリメーク。モンスターが次々と登場するのはサービスたっぷりだが、モンスターの動きが速過ぎてよく見えず、3D効果も薄い(67点)
試写を見逃したため、劇場で3D、字幕版で鑑賞した。ダイナメーション(ストップモーション・アニメ)の巨匠レイ・ハリーハウゼンが特撮を手がけた「タイタンの戦い」(1981)のリメークで、監督は「トランスポーター」のルイ・ルテリエだ。ギリシャ神話を映像化したファンタジーだが、ドラマは粗筋程度しか描かれない。ルテリエらしく、とにかく、次々とモンスターが登場する。別にドラマが見たかったわけではないので、サービスたっぷりな感じがしてよいのだが、困ったことに、そのせっかくの見せ場がよく見えない。3Dも思ったほど飛び出さない。
日本初のデジタル3D長編映画「戦慄迷宮3D」(2009)を清水崇監督が撮ったときにインタビューしたが、3D撮影独特の難しさの一つとして、実写では速い動きが立体に見えない、という点を挙げていた。その意味がよく分かった。モンスターが画面の奥から前に迫ってくる動きは多いものの、その動きが速すぎるために目がついていかず、飛び出して見えない。本作は元々3Dで撮影されたものではなく、2Dで撮影したものを後で2Dに変換したらしい。3Dでの公開を予定していなかったので、立体を考慮せずに撮影してしまったのかも知れない。
それより3D以前に、モンスターの動きとカット割りが速すぎて、殆どの場面が、何が何だかよく分からない。スピード感や臨場感はあるのだが、モンスターが見たいと思っているこちらとしては、フラストレーションがたまって、だんだんイライラしてくる。
モンスターの造形は非常によくできている。特にメデューサは、ハリーハウゼンの造形を引き継ぎながら、醜悪な顔を美女に、下半身のヘビの部分を巨大にしたことで、過去の映画と比べても最高のキャラクターになったのではないか。じっくりと見せてくれないのは本当に残念だ。サム・ワーシントンは「アビス」に続いての3D大作主演だが、神話の英雄というより海兵隊員に見えて仕方なかった。半分「神」なので、何かあると神様が助けてくれるというのが反則っぽい。
ハリーハウゼンのダイナメーション(ストップモーション・アニメ)には、動かないものが動くという感動、面白さがあった。それは映画の原点でもある。本作には残念ながら、その面白さが欠けていると思う。
(小梶勝男)