ゾンビランド - 渡まち子

◆これほど陽性のゾンビ映画は初めてで、大いに楽しんだ(65点)

 ゾンビものなのに妙にさわやかなところが魅力的。ホラー、コメディー、ラブストーリーと、複数のジャンルを盛り込むこの映画は、ゾンビ映画というより青春ロード・ムービーと呼びたい。人類の大半がゾンビと化したアメリカ。オタクで引きこもりの青年コロンバスは、生き残るために独自の32のルールを作って実践していた。故郷へ向かう旅の途中で、ゾンビを殺しまくるマッチョな男タラハシーや、詐欺師姉妹ウィチタとリトルロックらと出会う。4人は、ゾンビがいないと噂されるLAの遊園地“パシフィックランド”を目指すのだが…。

 主人公コロンバスの徹底したヘタレっぷりがいい。ゾンビ映画でお馴染みの怖いもの知らずのヒーローとはほど遠く、彼が自らに課したルールも生活臭たっぷりのセコいものばかり。そのくせちゃんと説得力があるから可笑しい。たとえば、ゾンビからひたすら逃げるため、作ったルールは「有酸素運動を欠かさないこと」。走って逃げるには1に体力、2に体力だ。ゾンビが本当に死んだ(既に一度死んでいるのだが)かどうか確認するため、必ず2度撃ちして止めを刺すことや、車で轢き殺した際に自分の身を守るためにシートベルト着用などもある。最も大切なルールは「決して英雄になるな」だ。ゾンビ映画のマエストロで、社会派かつ正統派のロメロの作品とは対極の、見事な逃げっぷりの物語を見ているうちに、この映画のゾンビはただの脇役にすぎないことが分かってくる。人間関係を上手く築けないコロンバスと、実は切ない過去があるタラハシー、男たちよりずっとしたたかでチャーミングな詐欺師姉妹は、やがて強い絆で結ばれていく。もちろん安全なはずの遊園地では大バトルが待っているのは言うまでもない。これほど陽性のゾンビ映画は初めてで、大いに楽しんだ。さらに、スペシャルゲストとしてビル・マーレイが登場するサービスも。いつ、どんな役で登場するかは映画を見て確かめてほしい。32のルールの中には「小さなことを楽しめ」の項が。こんなささやかな作品で思いがけず楽しめるのだから、そのルールは正しいという証拠だ。

渡まち子

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