スルース - 前田有一

浮気相手と夫のガチンコ対決サスペンス(65点)

 傑作戯曲の2度目の映画化である本作は、現代的な舞台設定と多少の結末変更があるため、72年版を見た人も大いに楽しめる。むろん、未見の人ならなおさら面白いサスペンスドラマだ。

 ベテランミステリ作家のアンドリュー(マイケル・ケイン)の豪邸に、売れない若手役者のマイロ(ジュード・ロウ)がやってくる。マイロはアンドリューの妻と不倫中であり、今日の招待はその件だろうと覚悟していた。マイロは堂々たる態度で逆に離婚を迫るが、そんな彼にアンドリューは意外な提案をするのだった。

 舞台は一軒の屋敷。登場人物はほぼこの二人のみ。騙し、騙しあう若者と老人。彼らの、会話を中心とした演技合戦こそがすべて。この上ないミニマムさが魅力の、優れたサスペンスだ。

 一人の女をめぐる、夫と浮気相手の対決。この、いかにもありがちな修羅場設定が面白い。しかも初対面時、夫はいきなり「金をやるから妻と勝手に暮らせ」などと提案するのだ。その方法として、男に要求するのはしかし、あまりにも奇妙な"ある事"。この美味しすぎる話を、さて信用してよいものか……。

 どちらが何に関して嘘をついているのか、その真意ははたしてどこにあるのか。先が読みにくいストーリーは、わずか89分の上映時間の最後までこちらの心をつかんで離さない。

 主演の二人は、年齢がずいぶん離れているが、どちらも演技派。見ごたえは十分だ。ちょいと映画に詳しい人なら、今回大金持ちの推理作家を演じるマイケル・ケインが、かつてのオリジナル版では浮気相手役だった事を覚えているだろう。

 そして、これとは別の『アルフィー』という映画作品において、この二人が原版、リメイク版のそれぞれで同じ役(主人公のプレイボーイ)を演じたことも。そんな因縁(?)ある二人、新旧アルフィーの共演を、大いに楽しんでほしいと思う。

 個人的には終盤の展開(72年版と違うところ)が、少々安易な逃げに思えてしまった点がマイナスに感じられた。また、この話には、こちらが解釈する余地がないほどキッチリ論理的な結末のほうが似合う気がする。

前田有一

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