髪を振り乱して周囲の人々を動かすコミカルかつエネルギッシュなヒロインを深津絵理が熱演、スクリーンから強烈な吸引力を放っていた。(点数 60点)
(C)2011 フジテレビ 東宝
一応、裏切り者の誹りを受けて首を刎ねられた無念を晴らしたいとい
った名目はある。ところが、なぜ眠っている人の上に馬乗りになって
金縛りにあわせるのかと法廷で問われると、“幽霊とはそんなものじ
ゃ”と法律家を納得させる答えを持たない。被告の疑いを晴らすため
に召喚された幽霊、姿は見えなくても意志があれば証人とみなされる
場面に死者もまた人間という思想が凝縮されている。映画は殺人事件
を担当する弁護士が落武者の幽霊と心を通じ合わせていくうちに、亡
くした父への感情と仕事に対する自信を取り戻していくまでを描く。
【ネタバレ注意】
スランプ真っただ中の弁護士・エミは妻殺しの容疑で逮捕された男の
弁護を引き受ける。男は犯行当夜は金縛りにあっていたと主張、立証
するために落武者・六兵衛の幽霊に証言台に立ってほしいと頼み込む。
その過程で、エミが関わる人々が他人に言えなかった気持ちを吐き出
していく。それは叶わなかった願いや解けなかった誤解、実現しなか
った夢。人はさまざまな悩みや後悔、つらさを抱えても生きていかな
ければならないことを学び、エミは成長していく。彼女の、いじらし
いほどの一途さはつい応援したくなるほど。そしてなんとか検察側と
裁判長に六兵衛の尋問を認めさせ、前代未聞の裁判として世間の耳目
を集めていく。
髪を振り乱して周囲の人々を動かすコミカルかつエネルギッシュなヒ
ロインを深津絵理が熱演、スクリーンから強烈な吸引力を放っていた。
(福本次郎)