もう少し登場人物の内面にまで踏み込んでいれば物語に深みが出たはずだ。(点数 40点)
(C) 2010 Black Monday Film Service, LLC. All rights reserved.
心を惑わす不思議な光に吸い寄せられ、人智を超えた圧倒的なパワー
になすすべもない。ミサイル攻撃も効果はなく、破滅の淵に向かって
逃げまどう。「地球が静止する日」の中で「二つの文明が遭遇したと
き、劣る方は滅ぼされるか奴隷にされる」というセリフがあったが、
この映画における地球のシチュエーションはまさに劣る方の典型。襲
い来るエイリアンには情けなど一切なく、ただ人間を資源として消費
する。その「劣る方」が感じる恐怖や無力感、そして最後まで捨てな
い誇り、それらは近世の欧州列強によって植民地化・奴隷化された新
大陸やアフリカの原住民の絶望そのものだ。
ジャロッドとエレインは青い光球が空から降ってきて街の住人を吸引
する現場を目撃する。翌朝、上空に静止した巨大UFOからクラゲ状の飛
行生命体が多数飛来し、高層マンションに残った人々を攫い始める。
もはやマンションの外は完全にエイリアンに包囲され、軍隊の応戦も
砲声が虚しく響くのみ。一度破壊したマザーシップもすぐに再生し、
ジャロッドたちの胸に芽生えたわずかな望みすら打ち砕く。そこで、
彼らが己の人生と自分たちの関係を見つめなおしていくのかと思いき
や、右往左往するばかり。
そのあたりもう少し登場人物の内面にまで踏み込んでいれば物語に深
みが出たはずだ。どうせなら、彼らが属する映像産業の“スペシャリ
スト”としての能力を生かすような構成上の工夫がほしかった。
(福本次郎)