ジュリー&ジュリア - 町田敦夫

◆コメディ専科の女性監督が迷える女性たちにエールを送る(80点)

 50年前に活躍した料理研究家のジュリア・チャイルドと、現代のブロガーのジュリー・パウエル。初めは「ただの人」だった2人の実在の女性が、料理を通じてそれぞれに自己実現を果たしていく様子を描いた、心温まる良作だ。

 1949年、夫の転勤でパリにやってきたジュリアは、専業主婦の生活に飽きたらず、名門料理学校に入学する。生活のかかったクラスメートにうとんじられながらも、持ち前の負けん気でめきめき上達。ついにはテレビにも出演するカリスマ料理研究家になっていく。おっとりしているようで自分探しには貪欲なこの中年女性の、なんと愛すべきことか。演じたメリル・ストリープは、本来の自分とはかけ離れた甲高い声や、のっそりとした身のこなしを模倣し、丁寧にキャラを作りこんだ。さすがはオスカー常連の大女優、“別人になりきること”を余裕綽々で楽しんでいる。

 キャラを作りこんだのがメリル・ストリープなら、ナチュラルな魅力を見せたのがエイミー・アダムスだ。作家になる夢を果たせないまま30歳になってしまったジュリーは、ジュリアの料理本に載った524のレシピを1年間で再現し、ブログにアップすることを思いつく。“何者か”にはなりたいけれど、どうすればなれるのかがわからずに彷徨っている女性は多いはず(男性もか)。時に無力感や劣等感にさいなまれながらも、できることを懸命にこなすことで自分なりの道を切りひらいていくジュリーの姿に、きっとあなたは勇気を与えられるだろう。

 それぞれの夫たち(スタンリー・トゥッチとクリス・メッシーナ)の献身ぶりもいい。いや、献身という言葉は適切ではないか。「夢の実現は応援するよ。でも夢がかなわなくても、そのままの君を愛しているよ」という感じで、非常に自然体なんですね。そのできすぎた夫ぶりはいささか非現実的に思えなくもないけれど、それが作品全体に温かみを加えているのも、また事実。やっぱりこれって、女性監督ノーラ・エフロンの秘かな願望なんだろうなあ。そういえばナンシー・メイヤーズ監督の『ホリデイ』や『恋愛適齢期』に出てきた男性キャラも、やはりこんな感じだったっけ。エフロンは本作の脚本も担当。半世紀の時を隔てた2つの物語を交互に描きながら、ジュリーとジュリアの喜怒哀楽を巧みにリンクさせた構成が素晴らしい。

 ちなみにメリル・ストリープは、『プラダを着た悪魔』ではスタンリー・トゥッチを手ひどく裏切り、『ダウト ~あるカトリック学校で~』ではエイミー・アダムスの油をこってり絞った。そんなイメージの落差を念頭に置いて鑑賞するのもご一興。劇中のストリープがトゥッチより縦横ともにデカいのにも注目したい。実在のジュリアが身長185センチの女丈夫だったためだが、実際の身長はしかし、トゥッチが173センチで、ストリープが168センチだ。このVFX、ド派手なだけの『2012』なんかよりよっぽどすごいかも?

町田敦夫

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