読みにくい結末はなかなかだが……(65点)
『本の雑誌』が選ぶ2000年度ベストテン第一位となった原作の映画化。何の前触れもなく、突然恋人に失踪された男の側のドラマを描いたミステリだ。私はこの原作は読んでいないが、この設定は面白いと感じる。グイグイ……とまではいかないが、それなりに観客を引っ張っていく魅力がある。ただ全体的には、淡々と話が進む静かな映画だ。
よくよく考えると無理のある話なのだが、鑑賞中は気づかせない。ミステリらしい意外な結末も、スクリーンに漂うのどかな雰囲気のせいで気が緩んだか、私はまったく読めなかった。
『ジャンプ』で唯一気になるのは音楽だ。個人的には、ちょっとだけ映像との不協和を感じる。役者では、牧瀬里穂の存在感と魅力が大きく目を引く。
『ジャンプ』は、今週の邦画の中ではもっとも大人の鑑賞に堪える映画と思うが、これは原作のストーリーがよほどしっかりしていたからだと想像する。今、日本製のミステリドラマを見たいというなら、とりあえずこれを見ておけば間違いはない。特に、ヒロインと主人公の年代に近い、20?30代くらいの人ならなおさらだ。
(前田有一)