シュアリー・サムデイ - 前田有一

◆芸能人の戯れ(20点)

 芸能人のように人前に出る仕事をしていると、おのずと自我は肥大し、ときにはおかしな行動をとる人が現れる。空気の読めない主張をしてブログが炎上したり、高慢キャラで映画批評サイトを作ってみたり、刺青に彩られた菊の門をご開陳したりと、その行動内容は多岐に渡る。

 映画好きの有名人が、無謀にも映画作りに挑戦するというのは、その中でもありがちなパターンだ。高揚感漂う撮影現場、クランクアップの感動、魔法のような編集により撮影時の何倍もの魅力を放つ完成品。そうした仕事にかかわっていれば、いつか自分も……と思ってしまっても無理はない。

 若くして成功した映画俳優、小栗旬がそうだったのかは知らないが、映画好きで知られる彼も、「シュアリー・サムデイ」でその困難(初監督)へ挑むこととなった。

 高校時代。自他共にみとめる大馬鹿野郎な5人組は、文化祭中止に抗議してハッタリで作った自作爆弾とともに教室に立てこもった。警察も出動する大騒ぎに発展してしてやったりの巧(小出恵介)たちだったが、何を勘違いしたか本物の爆薬をつめてきた仲間のせいで本当に大爆発。その後の人生を狂わせてしまうのだった。

 この事件がプロローグ。本編はそこから数年。それぞれろくでなしの大人に成長した悪友たちが再会するところから物語は始まる。その後の展開は、ヤクザあり風俗嬢あり、追いかけっこありライブありと、説明するより見てもらったほうがいいと思われる大サービス。それなりにどんでん返しもあったりして、やりたい事があふれている印象を受ける。

 ヤクザが銃をぶっ放しても警官がなかなか来ないファンタジーじみた世界観の中でそううい仕掛けをしても、どうせ大した効果はないのだが、意欲だけは感じられる。

 笑いあり、涙あり、驚きあり。初監督作品を満艦飾で飾ろうとする小栗旬の情熱がひしひしと伝わってきて、批判する事さえ気の毒になってしまう。あらゆる意味で稚拙だが、若い子が夏休みの間がんばって作った不恰好な工作を批判する気にはとてもなれないのと同じである。無理して努力した跡は見受けられるが、思い付きレベルのアイデアを並べただけで、作品の粋まで達してはいない。小栗旬の名を冠してなければ、企画段階で落とされる程度のものだろう。

 それでも、小栗旬の好きなもの、情熱を受け止めてやりたい、支援してやりたいというパトロン的な気分で見る方を私は否定しない。ただし、そういう特別な思いのない方にはすすめないし、かなりキツイ出来といわざるを得ない。

前田有一

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