母の息子への愛がせつないサスペンス(点数 90点)
(C)Shadow Dancer Rights Limited / BBC / The British Film Institute / Wild Bunch 2012
母の息子への愛を描いた映画と言えば、たいてい涙、涙の感動ものと相場が決まっていますが、本作はちょっと違います。
息子のために母がスパイになることを強要されるので、いつ、味方にばれるのかとドキドキしてしまうサスペンスなのです。
1993年の北アイルランド。幼い頃にIRA(アイルランド共和軍)と英国警察の発砲事件で弟を失ったコレット(アンドレア・ライズブロー)は家族すべてがIRAのメンバーで、緊迫した日々の中、ひとり息子を育てていました。
ある日、ロンドンでの爆破未遂で逮捕された彼女は、MI5(イギリス情報局保安部)の捜査官・マック(クライヴ・オーウェン)にふたつの選択肢を示されます。
「25年の刑に処され、息子とも会えず刑務所に入る」か「家族・友人らを裏切り、内部情報をMI5に渡す」か。
コレットは、息子のために、スパイになることを決意しますが……。
『クライング・ゲーム』から、20年。
母親が主人公で、IRAの戦いの日々を描いた物語が誕生しました。
内部情報を引き渡すことにより、裏切り者は誰かと画策され、コレットの身は危なくなります。しかも、MI5も一枚岩とは行かず、誰が味方で誰が敵なのか、混沌状態。
もう、ドキドキしちゃって、どのシーンも見逃せません。母の息子への愛だけではなく、戦士である兄ふたりや母との関係、さらには、コレットとマックの恋愛関係も始まって、さらに混沌とする物語。
一瞬たりとも目が離せない緊張感のまま、驚愕のラストに突き進んでいきます。
思わず叫びたくなるラストは必見です。
やっぱり女性は、たくましいですね。
(小泉 浩子)