シャッター アイランド - 前田有一

シャッター アイランド

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◆技巧はあれど、成功するとは限らず(55点)

 「アリス・イン・ワンダーランド」でティム・バートン監督とジョニー・デップが7度目のタッグを組んだように、映画界にはうまの合うコンビというものがある。本人同士の相性だったり、興行面での有利であったりと理由はさまざまだが、『シャッター アイランド』が4回目の顔合わせとなるレオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシ監督も、そうした相思相愛カップルのひとつだろう。

 舞台は1950年代、ボストン沖の孤島にある精神病院から一人の女性患者が失踪した。捜査のため相棒(マーク・ラファロ)と島に渡った連邦保安官(L・ディカプリオ)だが、悪天候とどこか異様な職員たちに翻弄され、一向に捜査は進展しない。

 原作は結末が袋とじという、典型的な謎解きミステリ。作品のテーマは……これは結末に言及しないと説明しにくいので省略。ただ、それがスコセッシ向きであることは間違いない。

 その意味で、監督のファンにとっては安心感を与えてくれるが、どんでん返しで驚きたい気軽なミステリファンにとっては、この退屈さはたまらないはず。

 マーティン・スコセッシは有数のシネフィルであり、あらゆる技巧に通じる映画監督だが、そういう人でも面白いミステリを作る事にはまったく関係がないことを本作は教えてくれる。歌唱力のある人の歌が、かならずしもいいわけでないのと同じだ。作品の魅力とは、テクニックとは無関係のところに存在するものだと私は思っている。

 ディカプリオはもとより演技派で、例の大ヒット作以来、軽いイメージがついて回っているものの、本来この主人公を演じる実力は軽く有しているはず。しかし、最も重要な水辺における子供たちとのシーン、そこがあまりに弱い。芝居がかったその演技は、まったくもってリアリティがない。この程度でOKを出すようでは、巨匠スコセッシも甘くなったと言われても仕方があるまい。本来あの場面は、レオの顔を見ているだけで背筋が凍るような精神の混乱を表現しなければならない。それがないから、本作は「衝撃のオチ」に驚きがない。

 実力者二人が手を組むのはたいへん好ましい事だが、それにしてもこの二人の相性がいいとは私は思わない。

 ディカプリオにとって致命的なのは、スコセッシと組んだすべての作品において、自身が持つ最大の武器「華」を殺されていることだ。演技力のある役者など、それこそ池袋のシアターグリーンで公演している小劇団にだってごろごろ存在する。だが華のあるスターはかけがえがない。その価値を彼がどれほど理解しているものか、少々心配になる。

 結局のところ、相思相愛でも互いを高めるカップルになれるとは限らない。

前田有一

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