◆見応えはとにかく抜群だ(70点)
1969年から1972年のアポロ計画で、二ール・アームストロングら12人の宇宙飛行士が月に到着してから今年で四十年目となる。ちなみに、この12人以外に月をはじめとする地球以外の天体に到着した者は今のところ誰一人もいないのである。
この四十年を記念にロン・ハワード監督がプロデュースし、デビット・シントン監督がメガホンを取ったドキュメンタリー映画が完成した。シントン監督にとっては、これが長編映画初挑戦なのである。
実際に月面着陸した12人の宇宙飛行士のうちの10人のインタビューとNASAの貴重映像の数々を交えて構成し、アポロ計画の真実に迫る本作。その大きな見所は、やはり一部が初公開となるNASAの映像ライブラリーだ。四十年もの間、冷却保存されていた映像の数々がデジタル処理化され、鮮やかな映像となって観る者の前に次々と映し出される。そのどれもが貴重映像であるため、観る価値だけは大いにありだと断言できる。スケールは実に壮大であり、緊迫感や迫力が伝わってくる映像は圧倒的であり、見応えはとにかく抜群だ。地学や宇宙科学、天体に興味を抱いている者にとっては、かなり美味しすぎることに間違いはないはずだ。
これらの映像と10人の説得力のある証言が観る者に疑似体験させるような作り方がなされており、この点からも映画としての面白さが伺える。10人の証言からは当時の苦労話や月から帰って来てからはどのように変わったのか等が伺えるため、非常に興味深い。貴重映像に次いでの注目すべきポイントなのである。
ラストは、この手の作品によく観られがちな近年の環境問題を訴えたメッセージがしっかりと用意されており、観る者に疑似体験させた上で改めて環境問題に向きあえさせようとしているのである。また、アポロ計画捏造説に対するコメントも用意されており、実際に月の地面に足を着いた彼らが口にする内容はインパクトが大きくて印象深い。
アポロ計画に興味のある者は、本作を観て知識に磨きをかけることをオススメしたい。そうでない者は、驚かされる貴重な映像を存分に堪能することをオススメしたい。
(佐々木貴之)