サベイランス - 前田有一

◆デヴィッド・リンチの反対を押し切った監督(60点)

 鬼才デヴィッド・リンチ(製作総指揮)と、それに負けないくらい個性的な娘のジェニファー・リンチ監督が、父子協力して黒澤明の「羅生門」を撮る。そう聞いただけで、いいようのない疲労感を感じさせる、マニアにはたまらない一品。それが『サベイランス』だ。

 サンタフェの田舎町でおきた殺人事件を捜査する二人のFBI捜査官、エリザベス(ジュリア・オーモンド)とサム(ビル・プルマン)は、現場に居合わせた3人の目撃者を聴取する。悪徳警官、麻薬中毒の女、8歳の少女と、どの証言者も一筋縄では行かない。それぞれが不都合な「真実」を懐に隠し持っている状況で、二人ははたして真実に迫れるのだろうか。

 のっけから無音で、断片的な不気味映像、そして残酷シーンからはじまる。そんなところから、すでに異常な空気の映画だが、出てくる連中も一人残らず変な人間ばかりで、「リンチ映画」に身構えている観客をニヤリとさせる。ふむふむ、この程度ならなんてことはない。

 ……と思いつつ見ていくと、どうやら回想シーンには嘘がないルールらしきものも見えてくる。違和感ありまくりのキャラクターたちの嘘をどう見抜くか。こちらも脳内フル回転で画面に没頭する。もちろん終盤には予想外の展開が待ち受けていて、決して気持ちいい感動というわけではないが、それなりに心揺さぶられる体験をすることができる。

 ただ、終わってみても、どうも完全に解明した気になれず、残尿感のごとき感情が心に残る。この後味の悪さを愛せる人にはぜひ勧めたいところ。

 私としても、一度見ただけでこの作品を完全に読み解けたとは到底思えないが、数名いる目撃者の中で、唯一真相を見抜いた人物が何を見ていたかは、少なくとも作品のテーマと密接にかかわる重要ポイントだろう。

 ぱっと見の残酷な殺戮劇にまどわされず、この人物は本質を見ていた。だから真相に気づいたのである。その本質たる感情を、この監督は賛美したいということであろう。

 なおこのエンディングは、父親の反対を無理やり押し切ったものだという。つまり父と娘の解釈が唯一違う部分、娘のジェニファー監督ならではの個性が、ここにはこめられている。

前田有一

【おすすめサイト】 
Warning: file(): php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: file(http://www.beetle-ly.net/linkservice/full_nor/group73): failed to open stream: php_network_getaddresses: getaddrinfo failed: node name or service name not known in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 80

Warning: shuffle() expects parameter 1 to be array, boolean given in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 82

Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /export/sd09/www/jp/r/e/gmoserver/6/1/sd0158461/cinemaonline.jp/wp-content/themes/blog/sidebar.php on line 83

 

File not found.