◆ホラー&サスペンス好きのみならず、アーミーフリークにとっても見ごたえのある作品(60点)
スリルあふれるサバイバルゲーム「ペイントボール」に参加するため、深い森の中のフィールドへとやってきたデビッド(ブレンダン・マッキー)やアンナ(ジェニファー・マター)を含めた8人。ゲームがスタートするやいなや、あろうことか仲間のひとりが実弾で撃たれた。実弾を放ったのはいったい誰なのか? 次々と犠牲者が増えるなか、参加者たちは焦燥感を募らせていく……。
プレイヤーのひとりが実弾で撃たれた時点から、本当の意味でのサバイバルがスタートする。突如、恐怖のどん底に突き落とされる参加者一同。次は自分が標的になるかもしれないという不安に苛まれながら、人間は果たしてどこまで理性的でいられるのか? どこまで貪欲にサバイブできるのか? プレイヤーたちの気持ちをもてあそぶかのように、まったなしのサイコストーリーが展開する。
手ぶれする手持ちのカメラを通じて送り届けられるドキュメンタリー風の映像が、観客にフィールドの臨場感をリアルに追体験させる。銃撃戦、罠、いたぶり……と、プレイヤーたちには、それぞれ予測不能な修羅場が用意され、中盤へ向けての期待感が高まっていく。家族構成や現在の職業などを含め、各プレイヤーの背景とキャラクターがもう少し詳細に描かれていれば、「生き残るのは誰か?」という部分でも、もっと楽しむことができたであろう。
中盤以降はやや"殺し"のアイデアが枯渇するものの、その分「不気味さ」は増幅していく。少しずつスモークが取れて見えてくるゲームの真相は、ある意味、このフィールドでくり広げられる死闘以上に、見る者の気持ちをげんなりさせる。真に恐ろしいのは、銃弾でも刃物でも血しぶきでもなく、人を人とも思わない人間たちの心だ。
プレイヤーたちの軍事知識が豊富なうえ、本物の軍人よろしく重装備でフィールドを駆け回る姿も堂に入っており、ホラー&サスペンス好きのみならず、アーミーフリークにとっても、見ごたえのある作品に仕上がっている。日本では「ペイントボール」とは少しルールの異なるサバイバルゲームが人気だが、より実戦色の強いこの「ペイントボール」も、今後愛好者が増えるかもしれない。
序盤、フィールドに着くまでのトラック内の様子を描いたシークエンスから数人のプレイヤーが殺されるまでの展開がスリル満点だっただけに、中盤で「ある存在」の視点が加わって以降、テンションがやや弛緩してしまったのがもったいない。むしろ「ある存在」は着火材程度の役割にとどめておき、火がついたが最後、極度の疑心暗鬼に陥った参加者たちが、あとは勝手に殺し合うという自滅的な展開のほうが、この作品には似合っていたかもしれない。
(山口拓朗)