サウスランド・テイルズ - 岡本太陽

『ドニー・ダーコ』のリチャード・ケリー監督最新作(55点)

 2001年にアメリカで公開された『ドニー・ダーコ』という、ウサギに世界の終わりを告げられた17歳の少年の奇妙な体験をダークでユニークに映像化した作品がある。この作品は2001年のサンダンス映画祭で『メメント』『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』と共に話題をさらった。監督はリチャード・ケリー。初監督作品がいきなりヒットした、現在は32歳という非常に若い映画監督である。その彼の第2作目の映画が2001年の『ドニー・ダーコ』から6年もの沈黙を破り公開に至った。それが『サウスランド・テイルズ(原題:SOUTHLAND TALES)』というSF+コメディ+スリラー+ミュージカル映画だ。

 2005年、アメリカはテキサス、いわゆる普通のアメリカの住宅街、人々は外に出ており、楽しそうな子供達の笑い声が聞こえる。その日は独立記念日だった。しかし彼らはある瞬間遠方に大きなキノコ雲を見る。テロで核爆弾が落とされたのだ。これが第三次世界大戦のはじまりだ。そしてイラクに赴いた軍人の”This is the way the world ends(こうして世界は滅びるんだ)"という語りかけによって物語は始まる。

 そして時は2008年、大統領選挙が迫っている独立記念日間近、ロサンゼルスは3日間に渡って熱波が続いていた。イラン、イラク、シリア、北朝鮮そしてアフガニスタンによる脅威に対し軍事徴兵が再び行われる様になり、アメリカは混乱に陥っていた。またこの頃US-IDENTというインターネットを通じて人々を監視する政府の機関が発足していた。同じ頃共和党と結束が固かったが記憶を失い自身が誰か分からなくなっているアクションスター:ボクサー・サンタロスは、元ポルノスターで自身のテレビ番組を持ち新マルクス主義者と繋がっているクリスタと恋仲にあった。彼は演じる役のリサーチの為にローランドという警官に出会うが、実はローランドは巨大な陰謀の鍵を握っていたのだ…。

 『サウスランド・テイルズ』の中では主に3人のキャラクターがフィーチャーされている。ザ・ロックことドウェイン・ジョンソン、彼は記憶を失ったアクションションスター:ボクサーを演じる。『ハムナプトラ2』でスコーピオン・キングを演じて以降度々映画に出演する様になった。今年も彼が主演した『THE GAME PLAN』がロングランヒットを飛ばしている。

 そして元ポルノスターのクリスタに扮するのはサラ・ミシェル・ゲラー。最近はホラー映画以外にもちょっとずつ出演している彼女だが、今回の役を非常に好演していた。来年早々にはブレンダン・フレイザー、ケヴィン・ベーコン、フォレスト・ウィテカーが出演する『THE AIR I BREATHE』という映画の公開を控えている。

 それから警官ローランドを演じるショーン・ウィリアム・スコットだが、今回は彼のキャリアの中で一番良い仕事をしていたのではないだろうか。圧倒的にコメディ映画が多いが、今回はいつもと様子の違う役である。その他の共演者にはミランダ・リチャードソン、マンディ・ムーア、ケヴィン・スミス、ジャスティン・ティンバーレイク、バイ・リン等がいる。

 『サウスランド・テイルズ』は前回の『ドニー・ダーコ』同様、世界の終わりというキーワードを携えている。しかし、『ドニー・ダーコ』よりもスケールが圧倒的に大きい。リチャード・ケリー自身は今回の映画の事をクエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』の様であると語っている。話の内容が『パルプ・フィクション』に似ているというよりは、『レザボア・ドッグス』の次の作品である『パルプ・フィクション』の位置づけに近いものがあるという。『ドニー・ダーコ』よりも更なる評価を狙っていたのかもしれないが、『サウスランド・テイルズ』は楽しめるものの、素晴らしい映画とは言い難い。

 というのも、この作品は混乱しているのだ。確かに混乱した世界を描いてはいるが、観客をも混乱させてしまう。それに作品全体が怒りに満ちており、不適切な言葉が始終飛び交う。おそらくまともな脳を持った人なら見るに堪え難くなってしまうだろう。昨年に公開予定だったらしいが、やはり試写や映画祭等での反応が悪かったせいで公開までに時間がかかったのだろう。2006年のカンヌ映画祭で上映されたが、この時は2時間40分上映時間だったのが、2007年11月の公開時にはそれから19分も短縮されている。

 しかしユーモアのセンスはわたしは買っている。元ポルノスターのクリスタはテレビ番組を持っているのだが、それはリアリティショー調の番組で、そこでクリスタと他の3人の女性が成す会話が馬鹿過ぎて面白い。またクリスタは曲をリリースしているのだが、そのシングルのタイトルは「Teen Horniness is Not A Crime(十代の欲情は犯罪ではない」というふざけたタイトルだし、US-IDENTという政府機関で働くある女性が、人が大勢いるビーチでドウェイン・ジョンソンに叫ぶ言葉"I wanna suck your dick right now!(あなたのアソコを今すぐしゃぶらせて!)”には笑えた。意外にも下ネタ満載の映画である。

 またほんの少しだけミュージカル調になるシーンがあるのだが、そこがわたしの1番好きなシーンかもしれない。ジャスティン・ティンバーレイクが歌うThe Killersの「I’ve got soul/But I’m not a soldier」のシーンが非現実的でとても魅力的なシーンだった。先日公開された『アクロス・ザ・ユニバース』にでも出て来そうな雰囲気のものだった。いっそ半分くらいミュージカル風にすれば音楽に助けられて良い作品に仕上がったかもしれない。

 『サウスランド・テイルズ』はもしかしたら『ブレード・ランナー』の様な映画になるかもしれないと、結構期待して観たのだが、出来はあまり芳しいものではなかった。しかしリチャード・ケリーは非常に若い監督であるし、これからも多くの映画を監督していくだろう。現に、次回作は『ホステル』のイーライ・ロスが監督する予定だった『THE BOX』という作品を引き継いで監督する。これにはキャメロン・ディアスが主演ということだが、今度は是非観客を納得させるものを作って欲しい。

岡本太陽

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