精神科医が主役の本格医療サスペンス(点数 90点)
(C)2012 Happy Pill Productions.
先日、TUTAYAに行ったら、
昨年公開公開、ジュード・ロウ主演の『サイド・エフェクト』が
新作ランキングの第6位に入っていました。
是非見ていただきたい作品なので、紹介します。
ジュード・ロウ演じる精神科医バンクス、
自分の患者に抗うつ薬の新薬を投与したところ、
その副作用で夢遊病となり、夫を殺害してしまいます。
薬を投与したバンクスにも責任追求の手が及び、
信頼、名声も財産も全てを失う危機に瀕するバンクス。
しかしそこには、想像を超える陰謀がかくされていた・・・。
この映画のポイントは3つ。
一つ目は、「医療サスペンス」
映画前半部分は、精神科の診療場面や新薬治験の裏舞台など
精神医療の現場、裏舞台が描かれ、
医療の裏をのぞき見る「チームバチスタ」的なおもしろさがあります。
SSRIという抗うつ薬は、吐気や不眠、
衝動性を高め自殺未遂の危険性などを増すといった副作用があります。
そういう「薬の副作用」を描きながら、
それをサスペンスの素材として
うまく利用ししているいえます。
学術的にもきちんと監修されているようで、
精神科医の私が見ても大きな間違いはなく、見応えがあります。
細かい部分まで考えぬかれた、上質な医療サスペンスです。
2つ目のポンイトは、「転移」。
精神科医バンクスは、人生を棒に振るほどの大きなトラブルに
巻き込まれるわけですが、彼にも落ち度がありました。
『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラ演じる
魅力的な女性患者エミリーにひかれ、
彼女に対して時間外の診療をしたり特別扱いをしてしまいます。
これは精神医学では「陽性転移」といって、
クライアントに対して「個人的な好意」を抱くと
客観的な判断ができなくなり、
治療がうまくいかない原因になりかねない。
本来は注意しなければいけない状況にバンクスは、
まんまとはまっていくのです。
この辺の微妙人間関係、人間心理が精緻に描かれていく。
さすがに『トラフィック』でアカデミー監督賞を受賞した、
スティーヴン・ソダーバーグの演出です。
3つ目のポンイトは、「ドンデン返し」。
この映画、後半のストーリーを語ってしまうと
つまらないので言いませんが、
いわゆる「大ドンデン返し」ものです。
前半からは全く予想もつかない展開になっていきます。
主人公バンクスが、まんまとはめられたように、
多くの観客も騙されてしまう。
あなたは騙されずに、このトリックを見破ることができるのか?
ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、
キャサリン・ゼタ・ジョーンズなど演技陣も充実。
手に汗握る、先が見えない展開に引き込まれます。
上質のエンターテイメントてあると同時に、
精神医療の問題点も描き出す
社会派映画でもあります。
(樺沢 紫苑)