コントロール - 福本次郎

陰影の濃いモノクロの映像は主人公の苦悩の人生を象徴している。だが、その単調でずるずると滑り落ちるような感覚は、アーティストとしての創作上の葛藤ではなく、単に薬物の副作用で脳の機能が低下しているとしか見えない。(40点)

 陰影の濃いモノクロの映像は主人公の苦悩に満ちた人生を象徴しているようだ。時折、芸術の神が気まぐれに舞い降りてきてファンの心に残るような詞を残すとき以外はいつも陰鬱な表情で遠くを見ている彼の目に映る世界は、喜怒哀楽に彩られた風景ではなく、むしろ頭に靄がかかっているかのよう。その単調でずるずると滑り落ちるような感覚は、アーティストとしての創作上の葛藤ではなく、単に薬物の副作用で脳の機能が低下しているようにしか見えない。結果的にこの作品は夭逝した歌手の伝説ではなく、てんかんに苦しんだ一人の患者の闘病記としか思えなかった。

 NYのアートシーンに憧れているイアンはデビーと結婚し、働きながらバンド活動を続けていたが、やがてプロデューサーに見出されメジャーになっていく。一方でてんかんの発作に悩まされ、コンサート中に倒れる。

 カメラは決してイアンの内面に踏み込むことなく、彼の行為の傍観者であり続ける。イアンはほとんど感情を表に出さず、ゆえに観客はデビーと同様に彼が何を考えているのか推測するしかない。音楽への情熱を語るでもなく、てんかんの苦しみを訴えるわけでもない。ただ、ハートをわし掴みするような歌詞を歌う、かっこいいけれど何を考えているかわからない男という印象。デビーが離婚を考えたのは、長期間家を空けたり浮気したからではなく、一緒に暮らしていても心が通い合ったという実感がなかったからだろう。それはこの映画を見た観客も同じで、イアンの気持ちがさっぱり伝わってこなかった。

 大きくなりすぎたバンドの存在についていけないイアンは、自分をコントロールできなくなる。そして浮気相手に混乱した精神と愛を訴える手紙を書いたと思えば、デビーの下に戻ったりする。このあたりになると、異常をきたしたイアンの主観を客観的に描いているため支離滅裂なエピソードの羅列になっている。彼にとって、死だけは真実だったということは理解できたが。。。

福本次郎

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