ゲス・フー 招かれざる恋人 - 前田有一

結婚を考えているカップルが見たら最高に楽しいコメディ(75点)

 『バタフライ・エフェクト』で主人公を演じたアシュトン・カッチャーの主演最新作。67年の『招かれざる客』という作品の一風変わったリメイクで、「白人と黒人が結婚する」という米国における難題テーマを、両者の立場を反対に設定して、軽いロマコメに仕上げた作品。

 愛娘(ゾーイ・サルダナ)が結婚を前提に交際している彼氏を連れてくるというので、頑固者で心配性の父親(バーニー・マック)は男の身辺調査を依頼する。その結果、完璧な好青年だとわかり一時は安心した父だったが、黒人の娘がつれてきたのは、まったく予想外なことに、白人のハンサムな青年(A・カッチャー)だった。

 40年近く前の映画が描いたテーマ、すなわち白人と黒人の結婚が、いまだに特別なものとして映画の主題になるあたりに人種問題の難しさを感じてしまうが、幸いにしてこの『ゲス・フー 招かれざる恋人』は、気軽に見られるロマンティック・コメディ。こんな風にギャグにして笑い飛ばす事ができるというのは、まだマシというべきか。

 「黒人の厳格な家庭に白人青年が訪れ、父に気に入られようと悪戦苦闘する」という設定は、主人公が白人になった点でオリジナルとは逆になっているが、非常に面白い。アシュトン・カッチャーは、本来得意のコメディ分野ということで生き生きとしている。

 彼と、父親役の黒人俳優バーニー・マックの掛け合いはじつに楽しいものがある。たとえば、車内で二人きりになり、なんとか気に入られようと世間話をはじめるが、まったくかみ合わない時のアシュトンの必死さ。そんな、場のいずらい空気を助長するかのごときタイミングでかかる、あまりにも場違いなラジオの曲。このシークエンスは本当におかしかった。

 子供のように頑なに彼氏を拒否する父親と、一番早く理解してくれる母親、奔放な娘といった構図はあまりにステレオタイプだが、こうしたコメディの場合は有効な設定だ。米国人でなくとも、主人公青年の苦悩はよく理解できるし、カノジョ一家との付き合いといった悩みは人種など関係なく誰もが経験することだ。

 米国の人種問題をベースにしているとはいえ、日本人にわからないネタなどもなく、これは十分おすすめするに足る出来だ。ベタで単純な笑いがたくさんで、ラストはもちろんホロリとさせてくれる。結婚をいつか意識しているカップルに限定すれば、80点以上の満足度を味わえる。ひさしぶりに、基本のよく出来たロマコメに出会えたという印象だ。

前田有一

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