グッドモーニング・プレジデント - 渡まち子

◆現実には遠い存在である大統領を、庶民的、若さ、女性という3つの要素でぐっと観客に近付けている(55点)

 公人である大統領の、私人としての顔を描きながら、やんわりと社会風刺するヒューマンドラマ。半年後に任期を終えるキム大統領は応募したロトで大金が当たるが、公約で全額寄付を宣言していたので、大いに悩む。チャ・ジウクは最年少で大統領に。男やもめの彼は、朝鮮半島をめぐる一触即発の危機と同じくらい、初恋の相手との再会に動揺する。ハン・ギョジャは韓国初の女性大統領。超多忙な妻を支える優しい夫は、ストレスから青瓦台のルールを破り、支持率低下を招いてしまう。責任をとって離婚を切り出すが…。

 この韓国映画では、現実には遠い存在である大統領を、庶民的、若さ、女性という3つの要素でぐっと観客に近付けている。それぞれの悩みを聞き、何気なく彼らに助言を与える、青瓦台(韓国のホワイトハウス)のベテラン料理人の目を通して3人の人となりを描いていく手法が上手い。印象的なのは、韓国はもとより、日本やアメリカでもいまだに実現していない女性大統領を演じる“韓国の母”ことコ・ドゥシム。ちょっとコミカルながら凛々しい姿がいい。母親の影響力が強い韓国社会らしいキャラクターだ。政治とはある意味、パフォーマンスやショーのようなもの。イメージアップのため、マスコミや政敵を利用し、ときにはスタンドプレーも辞さない大統領の言動には、ちゃんと演出家が存在する。懸命に演じる政治家とともに、それらに踊らされる国民に対しても、ちょっぴり皮肉なまなざしが。3人の大統領は皆、国政を行いながら、悩みがあれば、台所で専属シェフと語らう。食べるという行為は、どんな人の心もなごませる魔法の薬のようだ。心をリフレッシュして誠実に激務に戻っていく様子は、政治への理想とも言えるファンタジーで現実感はないのだが、だからこそ楽しめるのかもしれない。韓流スターのチャン・ドンゴンが4年ぶりにスクリーンに復帰していることでも話題の1本だ。

渡まち子

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