複雑にねじれた感情を、ジュリアン・ムーアは繊細な表情の動きで見事に表現し、映像のテンションをスリラーの域にまで高めていく。(点数 50点)
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夫は年齢を重ねても魅力的になっていくのに、自分の容姿は日々衰え
ていく。女としての自信をなくし、夫とのセックスさえ拒むようにな
った妻は更年期を迎えますます不安定になっていく。そんな彼女のわ
ずかな疑念が疑惑に成長し、やがて確信へと変化していく過程は緊張
感たっぷり。映画は高級娼婦に夫の身辺調査を頼んだ女が、その顛末
を知らされていくうちに妄想の度を深め、狂気の寸前まで追い込まれ
ていく姿を描く。女性の体を知り尽くした産婦人科医でありながら、
自らの肉体と精神の変調には冷静に対応できない設定は皮肉が効いて
いる。
出張中の夫・デビッドの帰りを待つキャサリンは、その夜彼が戻らな
ずショックを受け浮気を疑う。キャサリンは娼婦のクロエにデビッド
を誘惑するように依頼、クロエは密会の一部始終をキャサリンに話す。
“客の求める女を演じるのが娼婦”と心得ているクロエはデビッドに
近づき、すぐに肉体関係になったとキャサリンに報告する。デビッド
とのセックスの感触は、キャサリンがいちばん欲しているにもかかわ
らずいまや手に入らないもの。2人の親密な行為のディテールをキャサ
リンは耳をふさぎたくなる気持ちで聞きつつも、もっと詳しく知りた
いとも思っている。
この複雑にねじれた感情を、ジュリアン・ムーアは繊細な表情の動き
で見事に表現し、映像のテンションをスリラーの域にまで高めていく。
(福本次郎)