もっと人物像を深く掘り下げるとか、アッと驚くアイデアがひとつくらいは欲しかった。(点数 30点)
(C)「ガクドリ」製作委員会
寝てもドリフト覚めてもドリフト、そんな若者が学生たちのドリフト
No1を競う大会を目指して切磋琢磨する。まったくの素人だった主人公
がさまざまな出会いの後に未熟でジコチューな性格を変えていく過程
で、同じ目標を持つ部員と友情を交わし信頼を得て恋をするという成
長の物語に、一匹狼の男やケバいギャルを絡めるのだが、いかんせん
脚本の骨格があまりにも脆弱。もっと人物像を深く掘り下げるとか、
アッと驚くアイデアがひとつくらいは欲しかった。
大学に入学したマサキは自動車部に入部するが、非常識で礼儀知らず。
孤高のドライバー・速水は峠で勝負した相手に大けがを負わせる。キ
ャバ嬢の莉香は稼ぎをすべてクルマにつぎ込んでいる。
彼らは、学生ドリフト選手権、通称ガクドリ出場を夢見ている。とこ
ろが、彼らの、特にマサキのテクニックはとても競技者を志すレベル
に達しておらず、ガキの危険な遊びにしか見えない。そこにはメカに
対する知識や運転技術へのリスペクトは微塵もなく、中途半端なコメ
ディの味付けでお茶を濁すばかり。
そもそも語り部たる熊太郎はほとんど出番がないし、カメラマンが追
う「光の一団」にもオチがつかない。莉香たちが標榜する「女にしか
できないドリフト」に至ってはいったい何なのか理解に苦しむ。せめ
て彼女が実演してくれれば納得するのだが…。製作費が少ないのはわ
かる、それでも作り手の熱意だけは感じたかった。
(福本次郎)