人類と異星人との虚々実々の戦い (点数 85点)
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地球に残されたひとりの男が地上を支配するエイリアンと孤独な戦いを挑むのだが、その対立には大きな秘密があった。
先の戦争で廃墟となったアメリカの荒涼とした風景が彼の孤独を一層深める。千メートル上空にあるスカイタワーで暮らすジャック(トム・クルーズ)と彼をアシストするヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)の快適な生活と対比するように今は廃墟となってしまったエンパイアステートビルが朽ちるように佇む。
彼の夢の残滓となって微かに残るのは、まだ健在だったこのビルの展望台で告白した会ったことのない女性の記憶だった。
この女性が誰であるのかはいずれ解き明かされるのだが、同僚であり親密なパートナーであるヴィクトリアとの関係に満足しながらも記憶の断片に残る”夢の女”に固執するのは、ある意味男が永遠に求め続ける女性性の象徴である。
それがなかなかロマンチックでもある。
限定的に言って男のロマンなのである。
そういう男性の共感を確保しつつ物語は人類と異星人との戦いの謎に迫っていく。
この作品はオチが面白い。
ネタバレで興を殺ぐことになるので詳細は明かせないのだが、現代社会でも論争されている倫理問題について絡んでくるのでタイムリーなのだが、ハッピーエンドにしても額面通りには受け取れない複雑なラストが一片の問題提起を含んでいる。
それは観る人によって受け取り方が違うだろう。
30年前のある日本のテレビアニメにも同様の伏線の回収があったのだが、今作でもそれは一部踏襲されておりこのトリックは経年劣化することなく現在でも新たな気づきを与えてくれる。
(青森 学)