で曲がったことが大嫌いだが、楽天的でいつも前向きな少年を吉井一肇が大熱演。(点数 40点)
(C) 2011 『エクレール・お菓子放浪記』製作委員会
甘く切ないメロディに乗せて、澄み切ったボーイソプラノで朗誦する
「お菓子と娘」。食糧が不足していた戦中戦後の動乱期、主人公の少
年は砂糖をたっぷり使ったお菓子を夢にみて、歌声に希望を託す。そ
の思いは、好きになった年上の女への恋心とシンクロし、少年を真っ
直ぐに歩ませる。映画は、感化院に収容された少年が美しい先生との
出会いを経て苦難の時代を生き抜く決意を固め、どんな苦労にも耐え
抜く姿を描く。真面目で曲がったことが大嫌いだが、楽天的でいつも
前向きな少年を吉井一肇が大熱演。
孤児ゆえに感化院に入れられたアキオは指導教官の暴力に脅えつつ、
院長の姪・陽子が教えてくれた歌で気分を紛らわせている。その後フ
サノという老婆に引き取られたアキオは、映画館で働きはじめる。
食料はもちろん芝居を楽しむ自由も制限されている。それでも、庶民
は知恵を絞りなんとか日々をしのいでいる。空襲で焼け野原になった
東京、敗戦の絶望の中からいち早く気持ちを切り替えて生活を再建さ
せようとするアキオをはじめとする人々の活気は、戦争なんかには負
けない日本人の勇気と生命力を感じさせてくれた。そんな中でも、ア
キオは持ち前のバイタリティで子分を引き連れ大人顔負けの商売上手
ぶりを発揮、混乱をチャンスに変える強さを見せてくれる。
だが、物語を構成するエピソードが無理矢理つぎはぎしたようなぎこ
ちなさをたびたび露呈するのには閉口した。
(福本次郎)