ウルフマン - 小梶勝男

ウルフマン

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◆ユニバーサルの名作「狼男」のリメーク。リック・ベイカーの特殊メークは素晴らしいがストーリーが中途半端(72点)

 ロン・チェイニー・Jr主演の「狼男」(1941)は日本未公開だが、ユニバーサルの怪奇映画の名作だ。後に、「狼男の殺人」のタイトルでTV放映され、多くのファンを生んだ。「フランケンシュタイン」(1931)なども担当したメークアップ・アーティストの巨匠、ジャック・ピアースの特殊メークが素晴らしく、森の中を狼男がさまよう場面の怪奇ムードは、今見てもわくわくさせられる。

 本作の特殊メークを担当したのは、あの「狼男アメリカン」(1981)を手がけたリック・ベイカー。かつての巨匠の仕事を、現代の巨匠が受け継いでいるのである。そのメークは、ピアースのイメージを守りながら、リアルで現代的な狼男を見事に作り上げている。人間から狼男への変身場面が凄い。「狼男アメリカン」では、変身する人物が床に寝ている状態で、手足が変形し、剛毛が生え、顔がゆがんだり口がとがったりする。ところが本作では、主人公が立って歩きながら、手足や顔が変形していく様子を見せる。CGではあるが、その短い場面は息を飲むほどの出来だ。ピアースを尊重しつつも新たな見せ方にチャレンジしているのだ。

 一応、「狼男」のリメークとなっているが、ストーリーは途中からかなり違っていく。1891年、英国ブラックムーア。舞台俳優ローレンス・タルボット(ベニチオ・デル・トロ)は、兄が行方不明になったとの報を受け、25年ぶりに生家のタルボット城に帰還する。城には父親のジョン(アンソニー・ホプキンス)と、兄の婚約者グエン(エミリー・ブラント)が待っていた。やがて兄は惨殺死体となって発見され、タルボットも何者かに襲われる。ロンドンからは捜査にアバライン警部(ヒューゴ・ウイーヴィング)がやってくる。

 1890年代を舞台に、クラシックな雰囲気を保ちつつも、スプラッター描写もきっちりとある。手足も首も、派手に飛ぶ。狼男は人体を徹底的に破壊し、流浪民のテントを駆け抜け、ロンドンの町を屋根から屋根へ、走り、跳ぶ。スピード感があって、これらの場面は本当に素晴らしい。観客も狼男になって暴れ、自らの野生を解放しているような高揚感があった。

 クラシックとスプラッターの組み合わせは成功している。ジョー・ジョンストン監督が美術畑出身だけに、当時の風俗や風景を再現した美術も素晴らしい。しかし、タルボットと兄の婚約者グエンとの愛と、タルボットと父親との確執と、どちらが話の中心なのかよく分からず、中途半端な印象を受けた。ラストの狼男同士の戦いは、ここだけアクション映画みたいになってしまった。これでは、狼男に変身する怪物となってしまったタルボットの悲しみが伝わってこない。美術や特殊メークが非常にいいだけに残念だった。

小梶勝男

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