戦闘シーンですら格調高いシンフォニーのようだ。(点数 50点)
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天空に浮かぶ大理石の神殿から人間界の営みを観察する神々、強大な
武力と残忍さで世界を支配しようとする邪悪な王、鍛錬された武芸と
不屈の精神で祖国を守ろうとする若者。男たちは力強くしなやか、女
たちは豊満で優美、登場人物はみなギリシア彫刻のような肉体を誇示
し、リアリティよりもイマジネーションを優先させた感覚的なヴィジ
ュアルは巨大津波や肉弾相撃つ戦闘シーンですら格調高いシンフォニ
ーのようだ。
【ネタバレ注意】
ギリシアに侵入したハイペリオン王の軍隊がテセウスの村を襲う。目
の前で母を殺されたテセウスは奴隷にされるが、テセウスは伝説の弓
のありかを知る巫女・パイドラに助けられ、数人の仲間と脱走する。
神々がまとう黄金、巫女の真紅のドレス、ギリシア軍のいぶし銀の鎧、
ハイペリオンのカニばさみのような兜。古代ギリシアという時代設定
のもと、自由な発想でデザインされた衣装の数々が登場人物の性格を
表現していて印象的。さらにハイペリオンの大軍やギリシアの城壁な
ど画面の隅々まで神経の行き届いたディテールと、一瞬で数人敵を倒
すテセウスの洗練された格闘術が目を楽しませてくれた。
ギリシアの民が窮地に陥った時には、禁じられているにもかかわらず
神々は何らかの形で干渉し、結局は救いの手を差し伸べてくれる。も
しかしてこの映画は、国家破綻の危機にある現在のギリシアも救国の
英雄やオリンポスの神々が守ってくれると言いたかったのだろうか。
(福本次郎)