フクシマ以降、上端から吐き出される白い煙は毒を含んだ悪魔の吐息にしか見えない。(点数 60点)
(C)Stefanescu/Sattel/Credofilm
レンガ造りの古い街並みの近く、たくさんの自動車が走る生活道路の
そば、通勤電車の線路脇etc 人里離れた海岸線にポツンと佇む日本と
は違い、ドイツの原発は人々の暮らしに隣接している。カップを伏せ
た形の巨大な冷却塔は、CO2を出さないクリーンエネルギーとしてかつ
ては人類の叡智と科学の勝利を象徴していたはずだ。しかし、フクシ
マ以降、上端から吐き出される白い煙は毒を含んだ悪魔の吐息にしか
見えない。カメラは、原発施設の内部に入り込み、神殿のごとき原子
炉から廃棄物が保管される地底深くのトンネルまでレンズを向ける。
【ネタバレ注意】
1970年代、積極的に建設を進めていたドイツの原発は四半世紀以上を
経ても最新設備を誇っている。4重のチェックするシステムなど事故の
可能性が限りなくゼロに近いデータを強調する。
映画のトーンはどちらかというと、原発関係者が主張する安全性に対
し一歩引いたところからシニカルな視線を送っている感じ。相手に批
判もせずコメントも付けないことで「原発関係者の言い分は聞くが、
信じているわけではない」姿勢を貫く。
世界中が原発安全神話の嘘を知ってしまったいま、それは声高に反原
発を唱えるよりも強烈な効果を上げている。冷却塔内に作られた遠心
ブランコで子供たちが嬌声を上げる姿は、未来を明るいものにしよう
として作られたはずの原発が子供たちの未来を奪いかねない危険なも
のだったという皮肉としか思えなかった。。。
(福本次郎)