アフタースクール - 福本次郎

咄嗟の嘘がより大きな虚構の一部となり、相手を手玉に取っているつもりが実は自分が踊らされていたという真実にたどり着いたときの驚き。先入観で物事を判断すると大きな陥穽にはまる恐ろしさを、洗練されたテクニックで見せる。(60点)

© 2008「アフタースクール」製作委員会

 騙したはずが騙される。身を守るために出た咄嗟の嘘がより大きな虚構の一部となり、相手を手玉に取っているつもりが実は自分が踊らされていたという真実にたどり着いたときの驚き。映画は探偵の人探しを手伝う羽目になった中学教師の珍道中を通じて、人は自分が親しいと思っている人のことをどれだけ知っているのかを問う。テンポよくコミカルな展開は小気味よく、見事に「したやられた」という気分にさせられる。

 出産間近の妊婦を残して突然姿を消した木村は、偶然ホテル前で若い女といるところを写メに撮られる。その写真を手がかりに、探偵が木村を探し始め、手始めに木村の同級生と騙って中学教師の神野に近づく。木村は会社の社長の秘密とヤクザの情婦という二つを握っていた。

 二枚目でさわやかな木村、もっさりと冴えないが人のよさそうな神野。カネのために汚れ仕事も引き受ける抜け目なさそうな探偵だけでなく、観客もまた彼らの外見から受ける印象に勝手な想像を膨らませる。元々、木村の失踪自体が神野らの計画の一部だったのだが、そこに現れた探偵は想定外の事態だったはず。それとも木村と神野の仲のよさは周知の事実として、神野は自分の所に木村の消息を尋ねに来る人間がいることを予想していたのだろうか。また、社長が犯した不正の内容やヤクザとの関係ももう少し詳らかにしていればスッキリしたのだが。

 木村の上司と探偵は写真の女がヤクザの情婦と疑わず、見る者は断片的な映像から木村はもうすぐパパになると思い込む。全体像を見る前に、手に入れた情報だけで物事を結論付けることの愚かさをこの作品は笑う。クライマックスの謎解きの後、逮捕された探偵が神野を世間知らず呼ばわりするが、生き馬の目を抜くような世の中を知らなくても毎日数十人の生徒の動向に接している神野のほうが、人間を観察しその本性を見抜くという能力ではずっと長けている。先入観で判断すると大きな陥穽にはまってしまうという恐ろしさを、洗練されたテクニックで見せる内田監督のセンスは健在だ。

福本次郎

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